東京都日野市にあるバス会社「東新観光」

ASV(先進安全自動車)技術に頼らない運転を!東新観光の安全対策

国もバスメーカーもバス会社も、業界全体が一丸となって取り組んでいる貸切バスの安全運行。

先日取材したジャパン・トゥエンティワン株式会社のセミナーで、同社が販売するモービルアイ(後付け衝突防止補助装置)が特定ASV(先進安全自動車)に認定されたこと、また、三菱ふそうが純正アクセサリーとしてモービルアイの販売をスタートさせたという話題をご紹介しました。

今回は、ASV(先進安全自動車)搭載の新車にも、モービルアイを設置し、一つ上の安全対策に取り組んでいる東新観光さんを取材してきました!

もともとはASV車ではない中型バスや小型バス、マイクロバスの安全性を高めるために、導入したモービルアイですが、今回あえて、ASV車にも設置した理由について、社長である生沼(おいぬま)さんにお話しを伺ってきましたよ!

■もくじ
1. 「モービルアイ」を導入するきっかけは?
2. なぜ、新しい観光バス(ASV車)にもモービルアイ?
3. 個人利用者から人気のマイクロバスこそ、モービルアイが必要!
4.「セーフティバス」を取得したメリットとは?
5. 中小規模の貸切バス会社を束ねる存在として、先鞭をつける存在に
6. バス会社さんからも安全運行のためにお願いしたいこと!

「モービルアイ」を導入するきっかけは?

モービルアイをいち早く導入

東新観光さんが「モービルアイ」を採用しようと考えた、そもそものきっかけは何だったのでしょうか?

「衝突被害軽減ブレーキなどに代表されるASV技術は、新車の大型バスだけに搭載されているもので、すでに購入済みの観光バスには、そのような安全装置はついていません。

特に個人のお客様から人気がある、小型バスやマイクロバスなどでも安心してバス旅行を楽しんでもらいたいという思いから、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフ、GPS付き無線機の導入など、安全運行に有効とされる機器を積極的に導入してきました。

そんな時、モービルアイの販売代理店の一つ、株式会社テレコムさんからその有用性について話を聞く機会があり、導入してみようと。2014年に当社で所有するすべてのバスに装着しました」と生沼さん。

株式会社テレコムは、2016年11月、幕張メッセで開催されたぽると出版さん取材のイベント「第2回バステクin首都圏」で、クラウド型デジタコとモービルアイを装着した東新観光さんの大型観光バスを借り受け、試乗&実演用に出展。

実際の道路を走りながら、モービルアイがどのように警報を発するか、体感できるイベントを行い、注目を集めていました。

「第2回バステクin首都圏」でテレコムがモービルアイ体験用に出展
「第2回バステクin首都圏」でテレコムがモービルアイ体験用に出展した際の写真

導入当初は「警報がうるさい」、「お客さんがびっくりする」など、ドライバーさんから嫌がる声もあったそうですが、「警報を鳴らさない運転=安全運転」であることを、しっかりと啓蒙。

創業以来、事故らしい事故は起こしてなかったという東新観光さんですが、導入後、数か月ぐらいで「ヒヤリハット」の瞬間がさらに減り、運転の質そのものが向上するなど、成果を上げることができたそうです。

今ではドライバーさん自身も「自分を守ってくれる存在」として認知し、スムーズに活用できているそうです。

なぜ、新しい観光バス(ASV車)にもモービルアイ?

新しい大型バスには、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報装置など、最新鋭の安全装置の設置が義務付けられています。

三菱ふそう「エアロエース・エアロクィーン」、日野自動車「セレガ」、いすゞ自動車「ガーラ」など、各バスメーカーともに、ドライバーが運転中に居眠りをしたり、注意力低下を察知した場合は、警報を鳴らして知らせるモニターを装備。

ハード面からの安全性強化はより一層、強化されています。

一見、ASV車なら大丈夫なんじゃないの?と思いますが、東新観光さんでは、こういった新車にも「モービルアイ」を取り付けています。

それは、ASV技術は緊急時の「最後の砦」であり、本当の安全運転とは「ASVに頼らない」運転であるべきだと考えているからです。

モービルアイ搭載ステッカー
利用者にモービルアイ搭載を知らせるステッカー

「当社では、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフなども導入していますが、これらの機器は、万が一、事故が起きたときの記録装置、エコドライブのための支援装置としてとらえています。

GPS付き無線も、ドライバーとのやりとりをスムーズにするもので、事故を防ぐためのものではありません。

事故防止には、ドライバーの運転技術や安全意識を高めていくことが最も重要で、大きな事故につながりやすい「ヒヤリハット」の瞬間をいかに最小限にとどめていくかがカギだと思っています。

モービルアイは、その場、その場でドライバーに警報を発し、どのような運転が安全なのかを教えてくれる装置。

警報が鳴らない運転を心がけることで、急ハンドルや急ブレーキなどが減り、お客様にとっても「優しい、快適な乗り心地」の運転になっていきます。

ASV車だから大丈夫!ではなく、ASVが作動するような運転をしないこと。だからどのバスにもモービルアイを付けることにしました」。

実際に導入して以降、ヒヤリハットの瞬間もそうですが、会社の車庫に車をこするなどのちょっとしたトラブルも減りました。

生沼さん自身もドライバーとしてハンドルを握る機会がありますが、ずいぶん助けられているとのこと。

「運転中、急に横入りされ、安全な車間が保てず、警報がなったりということもありますが、お客様へは事前に、なぜ警報がなるのかをアナウンスし、理解を求めています。

皆さんの安全を守るための装置であることが伝われば、納得してもらえますよ」。

「セーフティバス」取得しているバス会社だから、「ASV車」だから安全ということではなく、東新観光さんのように日ごろから、運転の質向上に積極的に取り組む姿勢にも目を向けて、バス会社を選びたいものですね。

個人利用者から人気のマイクロバスこそ、モービルアイが必要!

東新観光の所有するマイクロバス「リエッセⅡ」

写真は東新観光さんが所有するマイクロバス(日野自動車のリエッセⅡ)です。もちろん、こちらのバスにもモービルアイを搭載済。

安全運行に積極的な証

バス車体には、貸切バス事業者安全性認定制度「1ツ星」認定のマーク、「バス ユナイテッド セーフティ(BUS)」会員マーク(こちらの団体については後程ご紹介します)、そして、国交省が認定する「特定ASV(車線逸脱警報システム)」ステッカー、モービルアイ搭載のステッカーが貼られています。

ドラレコ・タコグラフ一体型の装置も
ダッシュボード上にはモービルアイの警報装置

ドライブレコーダーとデジタルタコグラフ一体型、クラウド管理の装置に加え、モービルアイも搭載。

GPS付きの無線機で万が一も万全のバックアップ体制を敷いている

GPS付きの無線機など、万が一に備えた万全のサポート体制を敷いています。

生沼さんはマイクロバスこそ、こういった安全装置を付けるべきといいます。大きなバスでは運行できないような狭い住宅街や、人通りの多い繁華街などを走ることが多いマイクロバス。

「ヒヤリハット」を起こす可能性が最も高いからです。安全を見守るもう一つの目として、活躍するモービルアイ。

「特定ASV」としてステッカー表示ができるようになり、古いバスでも安全性にこだわっているバス会社であることを伝えやすくなりました。

貸切バス利用者にとっても安心感を与えてくれますよね。

軽井沢事故をきっかけに、貸切バスの安全運行へ厳しい目が向けられるようになっている現在。

旅行会社からも、一般の利用者からも、「セーフティバス」を取得しているバス会社、ASV技術を搭載したバスを借りたいという声が増えています。

しかしながら、中小規模のバス会社が「セーフティバス」を取得することは容易なことではありません。また、すべてのバスをASV車に買い替えることも、経営的に難しいことでしょう。

そんな場合、後付けできるモービルアイは、いますぐ始められる最良の安全対策といえるのではないでしょうか?

「セーフティバス」を取得したメリットとは?

東新観光さんは「貸切バス事業者安全性認定制度(セーフティバス)」において、2016年9月に「一ツ星」を取得しています。

この制度で認定を受けるためには、厳しい申請条件をクリアし、バスの安全運行に対し、たゆまぬ努力をし続けていることが必要になります。

東新観光は2016年一ツ星認定を受けています

申請にあたり、準備しなければならない書類はたくさんあり、本当に大変だったと生沼さん。

でも、この認定を受けるに当たり、安全運行のために「何が必要か?」、「どんなことをなすべきか」が明確になり、それをクリアするための目標を立てて実行することができたのがとてもよかったそう。

「このことをきっかけに、会社も変わったし、軽微なトラブルも減らすことができました」。

お客さんにとっても安全なバス会社を見分けるための指標になりますし、バス会社自身も自分たちの取り組みや体制を見直すきっかけにもなるということですね!

セーフティバス認定を受けたことはもちろんゴールではなく、さらにその上の二ツ星、三ツ星とランクアップしていくことが今後の課題。

安全対策には終わりがないということを常に自覚し、よいといわれることはどんどん取り入れていきたいとおっしゃっていました。

中小規模の貸切バス会社を束ねる存在として、先鞭をつける存在に

東新観光さんが貸切バス事業に参入したのは1997年のこと。

スタート当初は小型バス5台だったのが、現在は、大型観光バス6台、中型観光バス1台、小型観光バス3台、マイクロバス5台、コミューター(ミニバス)1台を所有する貸切バス会社へ成長しました。

社長の生沼さんは、もう一つ、地域の中小規模貸切バス事業者を束ねる「一般社団法人 バス ユナイテッド セーフティ(旧・東京バス交流会)」の理事長としての顔も持っています。

一般社団法人バスユナイテッドセーフティ

バス ユナイテッド セーフティ(BUS)」は、バス事業の健全な発展、公共の福祉の増進を図ることを目的に設立した団体です。

一般のお客様になかなか認知してもらえない、中小規模の貸切バス事業者の声を届け、「安心して選んでもらえるバス会社」を目指して活動しています。

1社だけではなかなか実施できない、メーカー主催の安全研修会や救急救命講習、「ヒヤリハット」の事例研究、など、お互いに協力し合い、情報交換を定期的に行うことで、各バス会社のレベルアップにつなげていくことも狙いのひとつ。

ドライバーの「適正診断」を受けに行こう、雪道の安全講習を受けよう、と、お互い声を掛け合い、会がリードする形で計画的に実施できるようになっているといいます。

1999年のスタート当初は、東新観光さんを中心とする「貸切バス 多摩交流会」として始まった会ですが、2008年には「東京バス交流会」として参加バス会社を増やし、2016年には法人格を取得。

東京のバス会社だけではなく、埼玉・千葉・神奈川などの関東圏はもとより、遠く、九州までネットワークを広げています。

「1社、1社の力ではできないことでも、志を同じくする貸切バス会社が何社も集まることで、できることがたくさんあります。

モービルアイの導入にしても、小さい会社では負担が大きく、導入をためらうのは当然のこと。

そういうバス会社の先鞭をつけて、当社が導入し、いいものであれば、広げていく。

そのことで、より安全なバスの運行を行えるよう業界全体の底上げを図ることができれば、バス会社自身もお客さんにとっても、非常にメリットだと考えています」と生沼さんはおっしゃっていました。

小さいバス会社の場合、ちょっとした事故であっても、会社の存続にかかわるような危機になることがあります。

「バスの事故があった場合、その原因やどうすれば防げたかなど、会員同士ですぐに情報交換をし、検証した内容を会員になっているバス会社へ伝えています。

昔は”常識”といわれてきたことも、現代の車や道路事情には合わないこともあります。

自社だけではなく、他のバス会社が経験したことや、ヒヤリハットの瞬間などを共有することで、安全管理体制の強化を図っていけたらと活動しています」とのこと。

「バス ユナイテッド セーフティ(BUS)」に参加しているバス会社さんは、バス車体にシールが貼られています。

セーフティバス(貸切バス事業者安全性認定制度)とともに、安全対策に積極的なバス会社さんの「印」として、バス選びの指標になりますね!

バス会社さんからも安全運行のためにお願いしたいこと!

安全のためにお願いしたいこと

貸切バスを借りたいと考えている幹事さんに、ぜひ知っておいてほしいことがあります、と生沼さん。それは、1人のドライバーさんが運転できる「時間・距離」には限界があるということ。

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(労働省告示第7号)」により、1日の勤務時間は13時間を超えないことと定められています。

例えば、お客様を朝7時に新宿駅まで迎えにいく場合、ドライバーはそれよりも前に会社に出勤。法律で定められた安全点検を、バスが車庫から出る前と戻ってきた後、それぞれ1時間ずつ(計2時間)を行います。

バス会社の車庫から新宿まで移動する時間を含めると、遅くとも、17時には新宿に戻ってこなければなりません!

もし、1泊2日の行程でバス旅行にでかける場合、1日の運転時間は原則9時間まで(2日間で平均して9時間)。次の運転時間まで8時間以上は空けることと決まっています。

たとえ、東京から山梨や長野までという場合であっても、いろんな観光地をたくさんまわることで、移動距離が500㎞超えてしまうという場合もNG。

1人の運転手さんが1日に運転してよい距離は500㎞までで、深夜・早朝の場合だと400㎞までになります。

法律で定められた運転時間・移動距離を超えてしまう場合は、交替運転手さんの配置が必要。

また、運転手さん2名体制であっても、1日20時間までが限界で、次の運転まで8時間以上の休息が必要です。

東京から大阪まで夜行で行って、翌朝到着、その日のうちに夜行でまた東京に戻る、といった依頼がありますが、これはできませんのでご注意を!

ここまで極端ではなくても、ぎっしりと観光先を詰め込んだ、長時間の運行をお願いされることもよくあるそう。

特に中小規模のバス会社さんの場合、所属しているドライバーさんの数はギリギリというところがほとんどです。

バスは空いていても、2名体制になる場合、運行をお引き受けできないということも・・・。

また、ドライバー2名体制だと、バス料金がとても高くなってしまいますのでご注意ください。

皆さんに安全に貸切バス旅行を楽しんでいただくために、スケジュールには余裕をもって、計画を立てること。

移動距離が極端に長い場合は、他の交通機関を利用し、現地での移動を貸切バスにするなど、工夫するのも手ですよ!

もう一つ、編集部からのお願い。「安全」を守るにはとてもお金がかかるということ!

各バス会社さんは、万が一の事故に備えて保険に加入。バス車内で起きた事故や、乗車中に起きた事故をカバーするもので、自賠責保険に加え、対人は無制限、対物200蔓延以上の任意保険加入が義務付けられています。

この他にも安全研修やドライバー教育など、たくさんの時間とお金をかけて、取り組んでいることを忘れてはいけません。

「安い料金で運行してくれるバス会社」は確かに魅力的かもしれませんが、きちんと安全対策に取り組んでいるバス会社なのかどうか、ぜひ皆さんも気にしてみてください。

バスご利用後アンケートでも、安いバス会社にしたら、運転が荒くてバス酔いした、対応がつっけんどんでお客様サービスが最悪だった!という声もよくききます。

安全対策に積極的なバス会社は「安全こそが最良のホスピタリティ」と考えています。お客様の立場に立ったサービスができるバス会社=安全対策に前向きなバス会社です。皆さんもぜひ、バス会社選びの参考にしてみてくださいね!

■取材・撮影協力

東新観光株式会社
東京都日野市大字上田388-1

<おまけ>
東新観光の生沼さんに「好きなバスメーカーは?」と質問したところ、「やっぱり日野自動車かな(笑)」との回答が!日野市のバス会社さんだけに「日野愛」は絶大、ということかもしれませんね。

一般社団法人 バス・ユナイテッド・セーフティ
http://bus-tokyo.jp/

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