シティアクセス安全対策会議2018

命をつなぐ「救命救急」とバス火災対応訓練レポート

こんにちは、編集部Iです。

今回は横浜市の元町や中華街にほど近い場所にある「シティアクセス」本社で、ドライバーを対象に行われた研修会を取材してきました。

テーマは「救命救急・避難措置」、横浜市中消防署・予防課中元さんが登壇。いざというときに役に立つ知識や技術について実践的に学ぶ内容でした。

最初は座学で最新の「救命救急」の考え方と手順の流れを紹介。その後、人形を使って実践しました。

人形を使った救命実践

救命救急の後は屋外で中型バスを使い、エンジンルーム付近で出火した場合の避難誘導と消火活動についての講習です。

救命救急にせよ、火災の避難・消火活動は、日頃からの訓練が大切。何度でも繰り返し体験することで、慌てず冷静に対処できるようになります。

今回は利用者側である私たちにとっても非常に有意義な研修会でした。

■もくじ
1. 最新の「救命救急」の目的や意義とは?
2. 救命蘇生法の流れを把握しよう!
3. こんな時はどうする?救命救急のQ&A
4. バスのエンジンルームからの出火を想定した避難・消火訓練
5. シティアクセスの「おもてなし」の高さが評価され、日本旅行より表彰

最新の「救命救急」の目的や意義とは?

シティアクセス横浜本社

急病人への対処法は、貸切バスや路線バス、高速バスを運行するバス事業者さんだけではなく、誰でも知っておきたい知識。

厚生労働省が発表した『JRC蘇生ガイドライン2015』を読むと、一般の方でも実施しやすいように簡素化され、手順や手技の正確さよりも、臆せずに実施できるよう配慮し、紹介されています。

今回の講義もこの指針にそった手順で講習を受けました。

まずは簡単に「救命救急」の最前線の知識・技術についてご紹介していきます。

一次救命処置とファーストエイド

熱中症で倒れた方を看護したり、ケガして出血している場合の止血など、苦痛をやわらげ、悪化しないように行動することを「ファーストエイド」といいます。

「一次救命処置」とは、突然の心停止や倒れて意識を失った状態の人に対し、AED(自動体外除細動器)や心肺蘇生を行うことで、命をつなぐ措置を行うことをいいます。

誰でも簡単な救命措置は行える

医療従事者でなくても、一般の人が行うことができ、病気やケガの人たちを社会復帰に導くための大切な役割を果たします。

「救命の連鎖」を救命隊や医者につなぐ

心肺機能が停止している場合などは一刻を争います。救急要請が出され、救命隊が現場に到着する平均的な所要時間は都心部で約9分、箱根などの郊外では約30分以上。病院到着までは全国平均で約40分もかかっています(総務省発表「平成29年版救急・救助の現況/消防庁」より)。

平成28年度に一般市民が遭遇した心原性心肺機能停止傷病者数は25,569名。そのうち、心肺蘇生を行った人数は56.1%の14,354名でした。

心肺蘇生を行った場合の1か月後生存率は、行わなかった場合の約1.8倍、社会復帰率は約2.4倍。

さらにAEDを使用した場合は約5割の人が生存・社会復帰を果たしたというデータがあります(総務省発表「平成29年版救急・救助の現況/消防庁」より)。

心肺蘇生に加えAED実施が生存率・社会復帰率をあげる

AEDや心臓マッサージをその場に居合わせた人がすぐに行えば、救急隊へスムーズに引き継がれ、生存率・社会復帰率が高まることがわかっています。

最近ではAEDが設置される場所が増えてきました。心肺蘇生やAEDは医療行為ではなく、万が一救えなかった場合に罪に問われることはないといいう見解が示されています。

「いざ」という場合は、躊躇せず、できる範囲で救命蘇生法を実施しましょう。

AEDの仕組みや効果とは?

AED(Automated external defibrillator)=自動体外除細動器とは、機械で心臓の動きを解析し、適切な電気ショックを与えるものです。

AEDは心臓の動きを一時的にとめる装置

けいれんを起こし、血液を全身に送り込むポンプ機能が失われている状態(心室細動)を起こしている心臓の動きを、電気ショックを与えることで一時的にストップ。その後、脳からの指令により、正常なリズムを心臓に取り戻させるのがAEDの仕組みです。

AEDは音声で操作方法をガイドしてくれるので操作方法は簡単。誰でも使うことができるのが最大のメリットです。

人工呼吸と心臓マッサージを同時に行わなくてもよい

TVドラマなどでよく心臓マッサージ(胸骨圧迫)と人工呼吸を行っている場面を見たことがあるかと思います。

でも講習を一度も受けたことがない、だいぶ前に1度受けただけという場合、実施をためらってしまいますよね?

そんな場合は、胸骨圧迫だけでも構わないので行ってほしいと横浜市中消防署・予防課中元さん。

心臓や脳に血液を送り続けることは、AEDによる心拍再開効果を高めるほか、脳への後遺症をできるだけ残さないことが期待できます。

人口呼吸による感染を防ぐシートやマスクを持っていない場合も、行わなくてよいといわれているので、ためらうようであれば、胸骨圧迫だけでも行うようにしましょう。

救命蘇生法の流れを把握しよう!

それではさっそく倒れているを発見してから、救急隊到着までに行う手順を説明します。

(1)周囲の安全確認を行う

倒れている場所が道端で、車や自転車が走っている場合もあります。まずは周りの状況を確認し、自分自身の安全を確保するようにしましょう。

(2)倒れている人の意識・反応を確認

安全が確認された後、倒れている人のそばに近づき声をかけます。

耳元で呼びかけ反応を観察

最初は耳元で小さい声で「もしもし、大丈夫ですか?」と声をかけます。そして3段階ぐらいに分けて少しずつ声を大きくしていき反応をチェック。その場合、鎖骨の上あたり(体に響きやすい)を同時にたたき、声とともに強めにたたくようにします。

(3)反応なければ大声で応援を呼ぶ

反応なければ大声で応援を呼ぶ

「誰か来てください」、「人が倒れてます」など、大声で叫び、応援を要請します。人がそばにいるようなら、「あなたは119番通報してください」、「あなたはAEDを持ってきてください」と具体的に声かけしましょう。

(4)呼吸を観察する

呼吸を観察する

普段通りの呼吸があるかどうかを10秒以内に観察。この場合、胸や腹部の動き(上下しているか)を見ます。

瀕死の状態でよくある異常な呼吸パターンとして「喘ぎ呼吸(しゃくりあげるようなとぎれとぎれの呼吸)」が見られる場合がありますので注意です。

もし判断に迷うようなら心停止と判断し、ただちに胸骨圧迫を開始しましょう。

(5)胸骨圧迫(心臓マッサージ)

圧迫の部位は胸の真ん中にある「胸骨」と呼ばれる平らな骨の下の部分。

胸の中央「胸骨」を上から圧迫

手のひらを重ね、垂直に体重が加わるよう両肘をまっすぐに伸ばし、圧迫部分の真上に肩がくるようにして押します。手と手を重ね合わせ、指を組むのがポイント。手のひら全体というよりも、親指の付け根の方、手掌基部に力が加わるように押すのがコツです。

力がまっすぐ伝わるように姿勢が大切

圧迫の深さは約5㎝ぐらい沈み込むぐらい。早いテンポで、1分間で約100~120回ぐらい押し続けます。

もし、人工呼吸と組み合わせることができる場合、圧迫を30回・人工呼吸2回をワンセットで繰り返すようにしてください。

(6)AED装着準備

心臓マッサージ開始とともに、別の人がAED装着の準備を進めます。

AEDを同時に準備する

倒れている人の頭近くにAEDを置き、電源を入れます。(蓋を開けると自動で入るものもあり)

電源が入ると音声メッセージやランプで操作手順を知らせてくれるので、それに従って操作しましょう。

同時進行でAEDを準備

電極パッドを取り出し、衣類の前を開け、肌に直接貼ります。電極パッドと肌の間に隙間ができるのはよくないので、きちんと密着できる位置に貼りましょう。

電極パッドをはる位置

パッドの位置は心臓をしっかり挟むように(上写真を参照)。

大人であれば、片方は肩の近く、もう片方はわき腹(肋骨)の下あたりです。小さな子どもなら片側を前側、もう片方は後ろ側で挟むようにつけてもいいそうd。

取り付け方はイラスト付きで説明書が同封されてるので、慌てず落ち着いて、手際よく貼りましょう。

また、貼り付けている間も心臓マッサージは休まず続けますよ!

(7)AEDによる心電図解析

心電図解析中は離れる

電極パッドの取り付けが完了すると「体から離れてください」というメッセージが流れます。すぐに倒れている人から離れ、周りの人にも離れるよう指示します。

他の人が触れていると心電図の解析がうまく行われない可能性があるので要注意です。

(8)電気ショックと心肺蘇生再開

AEDの心電図解析が終了。「ショックが必要です」というメッセージが流れると自動で充電がスタートします。周囲の人にもう一度、倒れている人に触れないよう声をかけます。

音声が流れたら速やかに離れる

充電が完了すると「ショックボタンを押してください」というメッセージが流れるので、誰も触れていないことを確認してからボタンを押します。

ショック終了後はすみやかに心肺蘇生を再開しましょう。もし「ショックは不要です」というメッセージが流れた場合でもただちに心肺蘇生を再開します。

AEDは2分おきに自動で心電図解析を行います。そのつど「体から離れてください」というメッセージが流れるので、聞き漏らさないようにしましょう。救急隊に引き継ぐまで、あきらめずに繰り返します。

もし、途中で呼びかけに反応したり、体を動かすなどがあれば、いったん中断して様子を見ます。再び心臓が止まる可能性があるため、電極パッドはそのままにしておきましょう。

こんな時はどうする?救命救急のQ&A

救命法実践の後、ドライバーさんからの質問について中元さんが答えてくださいました。

Q.もし倒れている場所が、交通の往来が多い場所だったら?

そんなときは、安全が確保できる場所まで傷病者を注意しながら運びます。
うつ伏せや横向きなど姿勢がおかしい場合も、仰向けになるよう、体位を変えます。

Q.雨が激しく降っていたら?

雨がかからない屋根の下まで運びます。

雨でぬれていると、AEDの効果が不十分になるため、乾いたタオル等で胸を拭いてから電極パッドを取り付けるようにしましょう。

もし、胸に貼り薬等がある場合はこれをはがし、軽くふき取ってから取り付けます。

体が濡れて体温が下がり低温症をおこさないように気を付けます。できれば暖かい場所へ移動し、濡れた衣類は脱がせ、乾いた毛布や衣類で覆うようにするといいでしょう。

Q.小さい子どもの場合、AEDや胸骨圧迫の方法は?

乳児から1~2歳ぐらいまでの子どもの場合は、電極パッドを体の前後ろで心臓を挟むように取り付けます。AEDによっては子ども用の電極パッドが入ってる場合もあります。胸骨圧迫は指2本で押すようにします。

何度も救命講習を受けていらっしゃるベテランドライバーさんたち。皆さん、胸骨圧迫の姿勢も様になっていました。

救命はためらわず速やかに開始する

もし、ご家庭に小さいお子さんがいらっしゃる、ご年配者の介護をしているという方は、ぜひ、救命講習を受けてみてはいかがでしょうか。お近くの消防署で受けることができますよ。

バスのエンジンルームからの出火を想定した避難・消火訓練

屋外では火災時の避難訓練を実施

2016年12月にシティアクセスで行われた「バス車両火災対応訓練」。バス火災が相次いで発生したことを受け、全国に先駆けて行われた本格的な訓練として注目を集めました。

その後、2017年にも9月にJR東海バスが愛知県内で、小樽の国道で乗合バス火災が発生。いずれも三菱ふそうのエアロクイーンとエアロエース(MS96VP)エンジンを載せている車両だったことから、国土交通省自動車局審査リコール課より事業者へ緊急点検を行うよう呼びかけがありました。

実車を使った避難誘導訓練

今回の訓練では、中型バスのエンジンルームから出火したと想定し、乗客を非常口から避難誘導。その後、消火器を使って火を消し止めるまでの一連の流れを確認。

水を詰めた消火器で消火訓練

また、高速道路で出火した場合を想定し、発煙筒の点火と遠方からも視認できる置き方も併せて体験しました。

発煙筒に点火

ちなみに発煙筒は「道路に立てて置く」のが正解だそうですよ。

限られた時間の中、全員が熱心に参加し、緊急時の対処法を学び、大変有意義な研修会になりました。

シティアクセスの「おもてなし」の高さが評価され、日本旅行より表彰

今回の訓練では日本旅行の国際旅行事業本部・海外営業部マネージャーの星さんも視察にいらしていました。星さんのセクションは海外からのお客様が研修や視察で日本を訪れた際、貸切バスを手配し、ご案内することが多いそう。

日本旅行よりシティアクセスが表彰

いくつかの貸切バス会社を利用し、実際に同乗したバスガイドさんへ毎回、バスの運行についてのアンケートを実施。満足度の高さを調査したところ、シティアクセスの評価が高かったことから、研修会でその表彰式が執り行われました。

優秀ドライバー三名が表彰

特にドライバーに対する評価が5段階評価のうち、最高評価の「5」を獲得。代表して秋山 健さん、石原 孝昭さん、森 研之さんと3名のドライバーさんに表彰状が送られました。

表彰された3名のドライバーさん

貸切バス事業者安全性評価認定制度「三ツ星」を取得。日頃から安全対策への取り組みやお客様満足度アップに力を入れた社員教育に取り組むシティアクセスさん。旅行会社さんからも客観的に評価されたことは励みにになりますね!

貸切バスは値段だけではなく、サービスや安全意識の高さで選びたいもの。「貸切バスの達人」では、これからもバス会社さんたちの取り組みを積極的に紹介し、皆さんの楽しいバス旅行や安心して任せられるバス会社選びのお手伝いしていきますよ!

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■取材協力
シティアクセス株式会社
神奈川県横浜市中区新山下3-8-45

■参考資料
「平成29年版 救急・救助の現況」平成29年12月19日 消防庁(総務省の報道資料より)

「救急蘇生法の指針2015」厚生労働省

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