
EVマイクロバスが登場。送迎用として「大阪・関西万博2025」会場で活用されています
株式会社 EV モーターズ・ジャパンが2025年2月に、国内初(2024年10月時点、自社調べ)のEVマイクロバス(F8シリーズ)を発売開始。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会に協賛し、4月13日(日)から開幕した「大阪・関西万博」で迎賓館を利用する世界各国の国王、大統領、首相などの賓客の輸送用として、5月1日(木)より運行を行っています。
静粛性や乗り心地の良さ、排出ガスを出さない環境性能などが注目されている反面、日本国内ではなかなかEVバスの普及が遅れていることも事実。今回はEV モーターズ・ジャパンのEVマイクロバスをご紹介しつつ、国内のEVバスの状況についてもご紹介したいと思います。
EV モーターズ・ジャパンの「EVマイクロバス」とは?

EV モーターズ・ジャパンのEVマイクロバス(観光・送迎用)は、2024年10月18日(金)に「海の森水上競技場」で開催されたぽると出版主催・体験型バスイベント「第10回バステクin首都圏」でいち早くお披露目されていました。
展示されていたのは5.99mタイプ。この他に6.99mタイプの2種類がラインナップされています。
5.99mはホイールベースが3,500mmと短く、市街地はもちろん郊外を走るスクールバスや送迎バス、デマンドバスなど様々なニーズに対応可能な車両です。また、普通充電と急速充電どちらでも充電OK。
EVマイクロバスの座席数

5.99mはオプションで11名乗りのVIP仕様座席に変更できるとのこと。今後の自動運転には欠かせないバイワイヤシステム(電気信号で制御する)の搭載も可能となっています。

6.99mのEVマイクロバスは、通常仕様に加えて低床仕様(ノンステップ)もあり。ワンステップは24名(正座席18+補助席4、運転席・助手席各2)、ノンステップは20名(正座席18、運転席・助手席各1)となっています。
EVマイクロバスのバッテリー容量・航続距離(㎞)

EVバスで気になるのがバッテリー容量と航続距離。EVマイクロバスは118kWh(一般的には35~80kWh程度)と大容量で、5.99mは260㎞・6.99mは250㎞程度の走行※が可能なのだそうです。
日帰り、あるいは近距離の送迎であれば問題なくこなせそうですね。
※実際の走行時の走り方や条件(気象、道路、運転、架装等の状況)により、航続距離は変化します
「大阪・関西万博」でVIP送迎用に提供されているEVマイクロバス

今回、「大阪・関西万博」で運行されているEVマイクロバスは5.99mの高床タイプで運転席を含む11人乗りのVIP仕様です。世界各国の国王、大統領、首相などの賓客の輸送用として活用されています。

乗降口にはオートスイングドアを採用し、ゆとりを持たせた室内空間で快適な移動が可能に。10月13日(月・祝)の閉幕まで大阪・関西万博会場内を走行するとのことなので、見かけるかもしれませんね。
EV モーターズ・ジャパンでは大型観光バスタイプのEVバス(12m)も発売。大容量の貫通式トランクルームを設置しており、貸切の観光バスだけでなくスーツケースなど荷物の多いエアポートバスや送迎バス等にも活用可能です。
(引用元:PRtimes)
国内のEVバス普及の現状は?乗用車のEV化よりも遅れをとっている
日本バス協会では2030年までに累計1万台のEVバスを導入する目標を掲げています。バス業界として2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた貢献の一環として、国・自治体の補助金活用やEVバス導入加速を促す目的で設定されました。
日本のバス総保有台数約24万台に対し、EVバスはまだ約150台程度
日本におけるEVバスの普及はまだ初期段階にあり、2023年3月時点で約150台と普及率は0.1%未満です。ノルウェーや米国が商用車のEV・FCEV(燃料電池自動車)販売比率100%を目指すなど、海外の先進的な取り組みに比べ、大きく遅れているのが現状。。

日本バス協会が国土交通省のデータに基づいて行った調査では、令和4年度(2022年度)に約80台、令和5年度(2023年度)に約100台のEVバス導入予定でした 。2023年12月時点では、95件の導入事例で合計171台、2025年2月時点では、EV大型バスが61台、EV小型バスが17台導入されています。
予定よりも少し加速している、という印象でしょうか(参照元:特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所ホームページより)。
普及の足かせになっている初期コストの高さ・インフラ不足など
普及がなかなか進まない理由として以下のような課題が上げられています。
- 初期導入コストの高さ
- 充電スタンドの不足
- 充電時間の長さ
- 電力需要のピークが重なりやすい
- 設置場所の制約
これらの課題解決には、安価な電池の調達、製造コストの低減、高性能化、そして公共充電設備の整備やスマート充電の普及が欠かせません。そんな中、「大阪・関西万博」では、走行中のEVバスへの非接触給電実証が行われています。
10分で80%充電可能な超急速充電器(120kW~350kW)の開発や、使用済みのバッテリーを充電済みバッテリーと交換することで、充電時間を大幅に短縮(目標5分)できるシステム「バッテリー交換ステーション」の実証実験も開始されました。
EVバス普及への後押しが期待されますね。
EVバス導入を後押しする国・自治体の補助金
EVバス導入促進として、環境省や経済産業省が「商用車等の電動化促進事業」として補助金を提供。東京都も独自の補助金制度を設けています。
バスの場合、標準的な燃費水準車両との差額の2/3が補助対象で、EVバス導入と一体的に行われる充電設備の導入費用も、本体価格の1/2が補助対象です 。
東京都では「EVバス・EVトラック導入促進事業(クール・ネット東京)」を実施し、EVバス導入費用の一部を補助 。東京都の補助金は、原則として国の環境省補助金との併用が必須であり、国補助額を差し引いた額が都からの助成額となります 。
国内のEVバスの製造・販売も加速中
これまでは路線バスやコミュニティバスといった用途で活用できるバスを中心にEVバスが製造・販売されてきました。今回、EVモーターズ・ジャパンから観光や送迎用のEVバスが登場。
貸切バス業界へもEVバスの活用が広がる可能性がでてきました。

現在国内で販売されているEVバスは、EVモーターズ・ジャパンの他、BYDジャパン、アルファバスジャパン、オノエンジニアリング(アジアスター)、アルテック、日野自動車・いすゞ自動車、ヒョンデ・モビリティジャパンがラインナップ。BYDジャパンからは中型EVバス「J7」を2025年に発売予定しています。
また先日、三菱ふそうトラック・バス(三菱ふそう)と日野自動車(日野)の経営統合の最終合意が6月10日(火)に発表。親会社であるダイムラートラック、トヨタ自動車を含めた4社で商用車の開発、調達、生産などの領域で技術開発、事業基盤を強化することに。
三菱ふそうトラック・バスでは、トラックのバッテリー交換式EVとバッテリー交換ステーションを使っ実証実験を2025年9月から東京で実施を予定。このことで従来の充電方式に比べ、車両の待機時間を大幅に短縮できるというメリットがうまれます。
バッテリー交換は全自動で行うため、ドライバーの負担も軽減されるとか。将来的にはバスへも応用できる技術だと思うので要チェックですね。
バスのEV化がもたらすメリットは環境負荷軽減だけじゃない

EVバスの導入は運行中のCO2排出量を大幅に削減できるため、環境保護に直接的に貢献します。また、走行時の騒音や振動が少ないので乗っている間も静かに快適に移動できる他、市街地や住宅地での騒音公害も軽減するというメリットがあります。
しかしそれ以外にも様々なメリットがあるんです。
ランニングコストの大幅な削減
EVバスは初期導入コストが高い反面、長期運用によりランニングコストを大幅に削減することが可能。国土交通省によると、EVバスは従来のディーゼルバスと比較して、運行費用を1kmあたり2.5円から14.7円程度抑制できると見込んでいます(参照元:国土交通省「電動バス導入ガイドライン」より)。
車検整備費についても、中型車両以外ではディーゼルバスより年間約6万~64万円程度抑えられる傾向があるとか。充電コストに関しても、ディーゼルバスの燃料コストに比べ30~40%程度の削減が期待できるそうです。
太陽光発電システムを導入し、再生可能エネルギー由来の電力を利用できるものを活用すれば、脱炭素と電気代削減を両立させる可能性がありますね。
災害時の非常用電源として活用可能
EVバスは搭載している大容量バッテリーを、停電時などの緊急時に非常用電源として活用できるのもメリット。
例えば、熊本県球磨村で導入された電動スクールバスは、地域の再生可能エネルギーと連携し、移動可能な非常用電源として機能させています。
路線バスから観光・送迎用バスまでEVバス化が進行中

インフラ整備などまだまだ課題は山積みとはいえ、バスのEV化は今後ますます加速していくことは間違いありません。まずは路線バスや近距離の送迎バスから。
将来的には日帰り観光などのバスツアーに使われるバスも、EVバスへと変換する時期が訪れることでしょう。
今後どのようなバスが登場するか見守っていきたいと思います。
バス会社の比較がポイント!