観光向けのEVマイクロバスも登場、2024年「第10回バステクin首都圏」に行ってきた
ぽると出版主催・体験型バスイベント「第10回バステクin首都圏」が、東京都江東区にある「海の森水上競技場」で2024年も無事終了。今年は日本バス協会・中央技術委員会全国大会との提携ということで、翌日の10月18日(金)に開催されました。
来場者数は全国から約900人。朝から雨交じりの天候、駅から少し遠い会場というアクセスの不便さの中、熱心に最新のバス・機材・システムなどを体験・見学されていました。
今回は電気バスが13台も展示され、中でも、貸切観光バスを意識したEVバスの登場に時代の流れを感じました。さっそく当日の様子をダイジェストでご紹介していきましょう!
もうこの流れは止められない、国内で市販されている全メーカーの電気バスそろい踏み
国土交通省では電動バス導入費用の一部を補助する「地域交通グリーン化事業」を実施中。東京都でも環境省の補助と併用することで「EVバス・EVトラック導入促進事業」を行っています。
貸切バスではまだ難しい課題(充電場所の確保など)もありますが、路線バスでは順次導入が進められているようです。今回は全部で13台の電気バスが展示され、貸切観光バスタイプのものも登場。
試乗会も行われました。
アジアスタージャパン/オノエンジニアリング
オノエンジニアリングは八王子に本社がある自動車販売・自動車整備、貸切バス事業を行っている会社。オノエンジニアリング傘下のアジアスタージャパンが揚州亜星(ヤーシン)製の電気バスを輸入販売しています。
今回は9m電気バスの展示と試乗、オノエンジニアリングらしい(!?)やんちゃな仕様のフレイトライナー・ボンネットバス(11m級の貸切バス)を展示していました。
オノエンスターEV 9m前扉車
オノエンスターでは、送迎貸切や自家用に向けたツーステップ・前扉仕様の中型電気バスを展示。床形状や扉配置など、さまざまな要望に応えて対応してくれます。
送迎用に大人数乗せられる仕様にしたい場合は補助席を付けることもできます。
送迎用であれば、充電ステーションを自社で持つなどEVバス導入ができるかも。路線バス以外で電気バスを導入するケースも少しずつ増えてきそうですね。
オノエンスターEV 9m<試乗車>
オノエンスターからもう1台、9mのEV車。こちらは路線バス仕様で試乗可能。
日本の路線バスは11mが平均的なのでそれよりも短い車体。狭い道でも小回りが利くので程よいサイズですね。
アルテック カルサン e-JEST日本仕様
欧州を中心に電気バスで世界22か国、1,000台以上の販売実績があるトルコの商用車メーカー・カルサンが製造する小型ノンステップ電気バス「e-JEST」。全長5.8m×全幅2mとコンパクトなボディながら、一充電航続距離は210㎞です。
BMW製のモーター・バッテリーを搭載。バッテリーを後部座席床下に搭載することで、最後部に大きな窓を設置し、広くて明るい室内を実現しています。
また重心を低くすることで安定した走行を実現し、乗り心地も向上しているそうです。2024年8月~9月に伊那市と那須塩原市のコミュニティバスに導入されました(運行・整備はJRバス関東が担当)。
びっくりしたのがこの超大型1枚ドア。ガラスドアなので開放感があります。
低床でステップ高も270㎜と足の悪い方でも乗り降りしやすいのが目を惹きました。
そして運転席もすっきり。周りが良く見えるので運転しやすそうです。
アンチロックブレーキシステム(ABS)や電子制御横滑り防止装置(ESP)、坂道発進補助装置(HSA)など、様々なセーフティ技術も採用されているので今後ますます導入するところが増えそうですね。
カルサン e-JESTは試乗車もありました。
日本仕様車は2023年に発売がスタート。定員は22名で、日本向け量産車を展示しています。
アルファバスジャパン/エクセル
アルファバスジャパン/エクセルの小型コミュニティー電気バスECITY L6。2023年末に発売されたもので、全長6.09m×全幅2.08m×全高2.98mのコンパクトボディです。
すでに甲府市内でも稼働中とのこと。1充電あたり航続距離は200㎞で定員は29人もしくは25人となっています。
業界最軽量4,700㎏、非常時には非常用電源車としても活用できるというのも魅力ですね。
そしてアルファバスECITY L10は試乗車として登場。全長10.5mで1充電あたりの航続距離は約240㎞となっています。
今回は西武バスで活躍しているアルファバスECITY L10も展示されていました。
西武バスのアルファバス ECITY L10
路線バスタイプの大型電気バス・アルファバスECITY L10(全長10.48m×全幅2.485m×全高3.26m)を採用した西武バス。滝山営業所に2台配置されているそうです。
外装は2020年から採用されている新デザイン「S-tory」。こちらのバスは同じタイプの試乗車で乗り心地も試せるようになっていました。
西武バスはBYD(ビーワイディージャパン株式会社)の大型電気バス・K8を、2023年2月、新座営業所に2台導入。関西電力のオンサイトPPAを合わせて導入しています。
昨年開催された「第9回バステクin首都圏」でも紹介していますので、ぜひご参考に。
EVモーターズ・ジャパン
北九州を拠点にEV事業を展開EVモーターズ・ジャパン。これまで各地で導入されてきたF8シリーズ2・全長10.5m、大型電気バスの最新モデルが展示されていました。
EV路線バス(F8 series2-City Bus 10.5m)
大容量バッテリー・世界最高クラスの低消費電力システム搭載で、1充電で280㎞走行可能。乗車定員数は77人で、前後スタイリングを含め外観を一新しています。
シートの形状のせいでしょうか、車内がとてもすっきり広々として感じます。
運転席もとってもシンプル。バスじゃないみたい・・・。
初公開 小型電気バス 5.38m
こちらは「バステクin首都圏」で初公開された路線バス仕様の小型電気バスで、全長は5.38mとワンボックスバンタイプの車と同じぐらいのサイズ。定員は10人です。
コミュニティバスやオンデマンドバスの電動化を考えている自治体などではかなり魅力的なタイプではないでしょうか。
ノンステップで車いすの方でも楽々乗降可能。ドアも大きく横に開くので車内がゆったりしているのが印象的でした。
こちらの運転席もご覧の通りすっきりです。
こちらも初公開の電気マイクロバス 5.99m
そしてEVモーターズ・ジャパンから観光仕様のマイクロバスを初展示です。
EVバスのマイクロバスは国内初(2024年10月時点)だそうで、「バステクin首都圏」で展示されたのは5.99m。この他6.99mのEVマイクロバスラインナップするとのこと。
ホイールベースが5.99mが3,500mm、6,99mが4,500mmと短く、市街地はもちろん郊外を走るスクールバスや送迎バス、デマンドバスなど様々なニーズに対応可能な車両となっています。
今回展示されていたEVマイクロバスは、観光旅行にも最適な豪華仕様のシート(5.99mのみのVIP仕様座席)になっていました。
普通充電と急速充電どちらでも充電ができ、6.99mは通常仕様に加え低床仕様もあるそうです。
バイワイヤシステムの搭載が可能となっています。
バイワイヤシステムとは、機械的機構(メカニカル・リンク)で動かしていた経路をなくし、ワイヤ(電気信号)で伝達することなのだそうな。ハンドルやブレーキなどは今の形やレイアウトである必要はなくなる、ってことでかなり自由度があがるらしい。
今回の運転席を見て、なんだかびっくりです。
Hyndai Mobility Japan(ヒョンデ・モビリティジャパン)
ヒョンデモビリティジャパンのエレクシティタウンは、2023年に韓国で発表された9m・電気バスです。展示車は日本仕様で定員55人。
バッテリー容量は145kWh、1充電あたりの航続距離は220㎞となっています。
日本仕様では中型電気路線バスとして、全長約9m×全幅約2.5m×全高3.4mのサイズ感。2024年末から販売を開始するそうです。
ヒョンデ・モビリティジャパンはこの他、観光バスでおなじみのユニバースも展示していました。
西鉄車体技術/日野自動車
九州に拠点を持つ車体の修理・改造などを行う西鉄車体技術株式会社、西日本鉄道株式会社の子会社になります。
今回は、日野自動車の小型電気トラック・日野デュトロZ(ズィー)EVウォークスルーバンをベースに、バスボデーを架装。
最低限の費用で乗客定員数8名、立ち席2名の小型田道モビリティバス試作車を製造して展示していました。1充電航続距離は150㎞。
小規模需要路線バスの電動化に向けた意欲的な提案となっていました。
バリアフリーにも対応するなど、小さな町の安全な移動をコンパクトに叶えています。路線バスのEV化に対するニーズに応える選択肢の一つとして興味深い展示でした。
大新東(シダックスグループ)
送迎バス、コミュニティバス、高速路線バスなどを運行している大新東(シダックスグループ)からは、トヨタのSORA FCバス(水素燃料電池バス)を展示。水素エネルギーを使って走る燃料電池バスで、排出物は水だけという環境負荷をかけないSDGsな乗り物として各自治体、バス会社に導入が進められています。
もう1つの特徴は災害時に電源としても利用できること。いざという場合に給電できることから、自治体などでも採用するところが増えていますね。
電気バス以外でもユニークなバスがいっぱい!
電気バスの展示が多かった今回の「バステクin首都圏」。この他にも安全な運行に欠かせない装備について体感できるバスや特別架装のバスなど、面白い展示がありました。
ダイジェストでご紹介していきます。
オノエンジニアリング/オノエン観光バス「フレイトライナー・ボンネットバス」
オノエンジニアリングがEVバス以外に展示していたのがこれ、フレイトライナー・ボンネットバス。アメリカの大型トラックブランド、フレイトライナーの主力であるボンネットタイプを11m級の貸切バスに仕立てたモデルです。
以前、取材させていただいた際、あの叶姉妹も乗ったという貸切リムジンを見せていただいたことがありました。
その時のゴージャスな内装に目を奪われましたが、今回のフレイトライナー・ボンネットバスもなかなかやんちゃ(!?)な仕上がり。
会社の周年記念パーティや誕生日パーティ?!
いったいどんな方がこのバスを借りてパーティを楽しむのでしょうか。そちらの方が興味津々です。
日野自動車「日野セレガハイデッカ(2PG-RU1ASDA)」
日野自動車からは貸切観光バス・高速バスなどで活躍中の日野セレガ・ハイデッカー車、2024年に改良発売されたモデルを展示。
レーンキーピングアシスト(LKA)、オートヘッドランプの新規設定の他、プリクラッシュセーフティシステム(PCS)の作動条件拡大や、ドライバー異常時対応システム(EDSS)の車線内停止機能が追加。
法規対応としてバックカメラ・モニターの装置変更を行いました。これらの機能は全て標準装備となっています。
ヒョンデ・モビリティジャパン「ユニバース AT車(2DG-RD00)」
観光バスや高速バスなどに採用されているユニバースは、安全性能の高さ、快適な走り、経済性の高いZF社製オートマチックトランスミッション「ZF 6AP2000B Coach」を採用するなど、コスパの良さで人気があります。
人間工学に基づいて設計された運転席は、ドライバーが使いやすく、運転に専念できる環境。安心・安全なバスの運行をサポートしています。
レゾナント・システムズ/ジャパン・トゥエンティワン「BYD J6 2.0(中日臨海バス所有)」
レゾナント・システムズ/ジャパン・トゥエンティワンの展示は、安全運転支援機器などを搭載した中日臨海バスの小型電気バス「BYD J6 2.0」です。「BYD J6 2.0」はビーワイディージャパンが日本市場向けに開発したもので、長さ約7m・最大乗車定員36名。
1充電の航続距離は210㎞と、コミュニティバスとして使いやすい走行距離を誇ります。今回展示されたバスは中日臨海バスが送迎用に運行しているものです。
こちらのバスには後付けできるモービルアイ・シールドプラスを搭載。前方衝突防止装置であるモービルアイをベースに開発されたもので、前方だけではなく、左右側方など大型バス特有の死角もカバーする警報装置です。
今回の展示では、車両側面後方のどこにカメラが設置されているかをわかりやすくしていました。
また、レゾナントシステムズからは、バスの安全運行をアシストするさまざまなバス機器を紹介。
音声合成放送装置やドライブレコーダーなど、ドライバーができるだけ安全運転に集中できるように支援する周辺機器を提供されていました。
エバスペヒャーミクニクライメットコントロールシステムズ・ドライバー用クーラー搭載車「三菱ふそうエアロスター(名鉄バス)」
ミクニグループであるエバスペヒャーミクニクライメットコントロールシステムズは、バスの空調用製品を名鉄バスの「三菱ふそうエアロスターMP38FK」に装備したものを展示。
猛暑日でもドライバーが快適に運転できるよう、ドライバー用クーラーを搭載した路線バスとなっていました。
室内機と室外機を別々に任意の場所に取り付け可能。エンジン停止中で一定時間使用できるそうです。
路線バスを運転しているドライバーは日頃からクーラーの効きの悪さを実感。実際にこのドライバー用クーラーをつけて運転したところ、約8割の方が冷房性能の良さを実感され、約9割の方が「欲しい」と回答されたそうです。
路線バスのクーラーがちょっと強すぎると感じることが多かったのですが、実はドライバーさんがかなり暑い思いをされていたのか・・・とちょっと納得です。
東海理化/川崎鶴見臨港バス「車内事故防止装置搭載・いすゞエルガ」
東海理化と川崎鶴見臨港バスは共同で「車内事故防止装置搭載・いすゞ 2DG-LV290N3」を展示。バスの走行中に席を立つなど、乗客の危険行動を車内に設置されたカメラで画像認識し、注意を呼び掛けるシステムを搭載しています。
「バステクin首都圏」では、実際にこのシステムを使用し、車内ではデモを行っていました。
MBMS(エムビーエムサービス)「リヤスポイラー付き小型バス・ローザ」
富山市を拠点に三菱ふそう車などの二次架装・ボデー改造を行っているMBMS。今回は三菱ふそうバスのローザ専用のリヤスポイラーを装着したアルペン交通のバスを展示していました。
リヤスポイラーは小型バスの空力性能アップ、ドレスアップを楽しむための提案。
リヤスポイラーを装着することで、リヤガラスの汚れも低減できるそうです。
中京車体工業「インバウンド向け小型バス・日野リエッセⅡ」
中京車体工業からはインバウンド客の利用を想定した小型バス「日野リエッセⅡロングボデー」をベースにした幅広キャプテンシート(マジカル・テクニカ製A330)と後部荷物室を備えたものを展示。
ゆったりとした車内で小グループでの国内旅行を楽しんでもらえるような設計となっています。客室レイアウトや装備はいろいろなバリエーションを用意しているそうです。
日本政府観光局(JNTO)によると、2024年6月の訪日外国人旅行者数(推計値)は313万5,600人だそうで、単月では過去最高を記録。京都などではオーバーツーリズムが問題になるなど、多くの外国人観光客が日本を訪れています。
今後もまだまだ増えそうな勢い。団体よりも小規模なグループで観光するインバウンド客を見据えた貸切バスの在り方も考える時期に来ているといえそうですね。
バス関連機器類、サービス類などを扱う会社が多数出展!
今年もバス周辺の機器・用品・システムを扱うたくさんの企業が「バステクin首都圏」に出展されていました。すべてをご紹介しきれないため、以下一覧で失礼いたします。
- エバスペヒャーミクニクライメットコントールシステムズ:バス用空調機器
- オージ:フルカラー行先表示器、降車合図装置ほか各種車載機器
- 神奈中情報システム:車両管理システム、点呼支援システムほか各種システム
- 関西電力/ダイヘン:電気バスパッケージシステム、EV用急速充電器
- 関電工:電気バス充電システム(アルファバスジャパンと共同出展)
- クラリオンライフサイクルソリューションズ:音声合成装置放送装置ほか各種車載機器
- 工房:発車オーライクラウド、電子点呼システムほかバス業界向けシステム
- 国際興業:消耗品、ケミカル剤、電気バス用蓄電池、運行情報表示器ほか
- ジェイ・バス:オリジナル製品、特装事業紹介
- シュンク・カーボン・テクノロジー・ジャパン:電気バス自動充電ソリューション
- ターボテクノサービス:リビルドターボ、返却コア調査サービス
- デンソーソリューション:デジタコ、ビジネスサポートシステム、ソナーシステム)
- 東海理化/川崎鶴見臨港バス:各種安全装置
- TOYO TIRES:路線バス用ほか各種タイヤ
- トム通信工業SWAT社:スマートウェーブIP無線機器、同システム
- 日本総合リサイクル:バス解体~リサイクル、中古バス販売
- バイス:天然素材の床材マーモリウムほか
- 日立インダストリアルプロダクツ:マルチポートEV充電器
- レゾナント・システムズ/ジャパントゥエンティワン:各種車載機器
すべてをご紹介しきれずにすみません。次回の開催も楽しみにしています!
■取材・撮影協力
株式会社ぽると出版「バスラマインターナショナル」
「第10回バステクin首都圏」
【開催日時】2024年10月18日(金)10時~16時 雨天開催・入場無料
【開催場所】海の森水上競技場
【協賛】公益社団法人日本バス協会 関東地区バス保安対策協議会
【後援】国土交通省関東運輸局
【主催】株式会社ぽると出版
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