貸切バスは短時間利用なら安い?貸切バス料金を徹底解説!

貸切バスは短時間利用なら安い?貸切バス料金を徹底解説!

「結婚式の披露宴会場から2次会会場へ」とか「会社から羽田空港まで」「会社からパーティ会場までの片道」など、約30分~2時間くらいの短時間・短距離での貸切バスのご利用をお考えの方によくいただくのが「短時間しか使わないから安くなりますよね?」というご質問。

確かに貸切バスは「使用時間」と「運行距離」を足すことで料金が決まってくるので、使用時間が短い場合、長時間使用するよりは安く済みそうですよね。

ただ結論から言いますと、残念ながら使用時間が短いからといっても思ったよりは安くならないことがほとんどだと思います。

その理由は貸切バスの料金体系にありました。

貸切バスを30分使う場合でも最低5時間分の料金がかかってくる?!

貸切バスの料金は「バスが走った距離=運行距離」と「運行にかかった時間=使用時間」の両方を足すことで算出されています。

実はこちらの料金については、地域(管轄する地方運輸局)ごとに国土交通省によって下限(最低基準額)が公示されていて、それを下回らない限り、バス会社が自由に設定可能。

特に上限は設けられていないため、利用方法や条件、季節、バスのグレードなどにより自由に価格を変えられます。

このため、バス会社ごとに計算する単価が異なるため、これまでのように概算を出すことが難しくなりました。見積りを取り寄せてしっかり比較する、というのがますます大事だということですね。

バスの最低貸切料金は、3時間以上から計算すると定められています。このため、たとえ貸切時間が30分だとしても運賃は3時間運行した場合と変わらないことに。

こちらに加え、安全な運行管理のためにバス会社が運行前に行う「出発前点検」(1時間)と営業所に帰ったあとの「帰社後点検」(1時間)、合計2時間分は必ず加えられます。

その結果、例え30分だけのご利用だとしても、最低運行時間分料金(3時間分・バス会社からお客様が乗り降りする場所への往復も含む)と点検時間(2時間)はかかってくることになり、結局合計5時間分の料金がかかってしまうのです。

最低運行時間分料金(3時間分・バス会社から常務場所への往復も含む)+点検時間(2時間)=5時間

2014年、貸切バス料金に下限~上限基準が設けられた背景

バスの大きな事故をきっかけに法律が改正
※画像はイメージです

貸切バス料金の下限から上限まで国土交通省により2014年(平成26年)に公示されたきっかけは、平成24年4月に発生した高速スキーツアーバスの事故です。

関越自動車道・藤岡ジャンクション付近で、乗務員45名を乗せて走行するツアーバスが左側壁に衝突。乗客7名が死亡し、38名が重軽傷を負うという悲劇に終わりました。

その後、料金を安くするためにドライバーの無理なシフトを組んだり、運転手に長時間運転させるなどを課せるなど、バス会社のずさんな管理体制が明らかに。社会問題として大変注目を集めました。

そしてその背景には、旅行会社とバス会社との力関係が影響していたことが判明。旅行会社から料金の大幅値引き要求や、交替運転手を確保できない状況にもかかわらず、運行を強要するなどが常態化していました。

旅行会社から仕事を打ち切られることを恐れたバス会社が、無理な運行でも引き受けざる得ないという実情がこの悲劇の背景に隠されていたのです。

これ以上悲惨な事故を起こしてはならないと、料金制度も徹底的にな見直しを図ることに。それと同時に短時間での貸切バスの利用は人件費だけかかってしまい、バス会社の経営を圧迫してしまうことから最低利用時間も設けることになりました。

この基準に従わずに利用者と運送契約を結び、実際に運行したことが明らかとなった場合、バス会社は行政処分の対象となります。

また、2016年におきた「軽井沢スキーバス事故」以降はさらに厳しくなり、旅行会社に対しても罰則を強化。運賃・料金についての通報窓口を国土交通省に設置し、不当なマージン請求が行われないよう、手数料の金額についても書面で取り交わすようになりました。

2023年8月25日に再び、国土交通省から「新公示運賃額」が公示された理由

その後、国土交通省が公示した下限~上限までの料金体系を基準に、各バス会社で運行をつづけてきました。

しかし実際のバス料金はというと、基準額(原価ライン)を下回った金額での契約がほとんどであることが判明。現状のままではバス事業の経営を圧迫することにもなりかねない状況でした。

実は「下限額」でバスを走らせた場合、原価割れになってしまう(原価ラインよりも10%安い)という基準。1年を通じて、この「下限額」で走らせ続けるとバス会社は実質、赤字になるという金額なのです。

安全性を担保しつつ、利益が確保できようにするには、赤字にならないギリギリの最低基準額を決める必要があった、というわけです。

今回公示された「新公示運賃額」は、その金額を下回ってはいけないという最低基準ライン。2022年と比べてバス代が値上がりしたな、と感じられる方も多いかもしれません。

しかし、原油や人件費の高騰によりバスのコストも上昇しています。ご理解いただければと思います。

貸切バス会社が運行前後に行う「安全点検」のコスト、なぜ運賃に反映するの!?

バスの運行前・運行後点検を義務付け

貸切バス料金には実際に運行した時間(最低3時間)に加え、運行前に行う「出発前点検」(1時間)と営業所に帰ったあとの「帰社後点検」(1時間)で2時間は必ず加えられるとお伝えしました。

つまり、どんな利用内容であっても、1運行に付き必ず2時間分の運賃を別にいただく計算(1泊2日のバス旅行の場合は、2日目もプラス2時間必要)になります。

その理由は、高いレベルでの安全・安心な輸送サービスを提供するため。安全対策にかけられるコストを適切に反映した運賃・料金体制を維持するためです。

バスはタクシーなどと違い、大勢の人が一度に移動します。そのため、ひとたび事故が起こるとたくさんの死傷者を出してしまいますし、故障すれば多大な影響を及ぼしてしまうことでしょう。

不当な値引き強要や不適切な料金値下げにより、真っ先に犠牲になるのは「安全性」です。人件費を抑えるために点検を省略する。不具合があってもそのままにする。運行管理のためのハイテク機器導入を先延ばしにするなどなど。

結果として一番不利益をこうむるのは、私たち貸切バスの利用者です。

「利用時間が短いのに高い!」という声はもっともですが、安全を高いレベルで維持するためには、どうしてもお金(コスト)がかかります。深刻な運転手不足を解消するためにも、新しい制度のもとで決められた貸切バスの適正な料金・運賃にご理解、ご協力をお願いします。

短時間で貸切バスを運行した場合の最低料金はどのくらい?

短時間で貸切バスを運行した場合の最低料金

それでは実際に短時間で貸切バスを借りた場合の料金がどのくらいになるのか、バスの大きさごとに調べてみました。

ただしこちらはあくまでも時間だけで算出した料金。実際にはこの料金に加え、バスで移動した距離の分も加算されます。

バス運賃を計算する単価は地域ごとによって異なるため、国土交通省関東運輸局(関東エリア出発)の場合を例に取り、解説します。

こちらの運賃にはバス(車両)のレンタル代、運転手の人件費、ガソリン代、車両保険代、車両の整備・点検代が含まれているということになります。

運賃計算(キロ制運賃+時間制運賃)

バスの種類キロ制運賃時間制運賃
大型バス160円/km(税抜)~6,580円/時(税抜)~
中型バス140円/km(税抜)~5,560円/時(税抜)~
小型マイクロバス120円/km(税抜)~4,770円/時(税抜)~

こちらの運賃は最低基準額であり、単価はバス会社ごとに異るのであくまでも目安。

また、深夜早朝時間にかかる場合、ドライバーが2名体制になる場合(運転手1人で1日に運転してもよい時間・距離をオーバーする場合は交替運転手が必要)、バスの仕様が特別な場合などは、割増となります。

◆深夜早朝運行料金:
バスが営業所を出発・到着する時間が22時~5時にかかる場合は割増料金を適用(2014年の改正では2割増しぐらい)。

◆特殊車両割増料金:
豪華仕様バス(座席数が極端に少ないようなプレミアタイプ)、電動リフト付き福祉バスなど(2014年の改正では運賃の5割以内での割増)。

※出典:新たな貸切バスの運賃・料金を公示します(国土交通省)

国土交通省・関東運輸局「新公示運賃基準額」を元に各バスの最低時間料金(5時間分)を計算すると下記のとおりです。

●バス種類別最低時間料金(※実際にはこの料金に移動距離分、バス会社から乗降場所までの回送分の運賃が加わります

  • 大型バス 36,190円(税込)
  • 中型バス 30,580円(税込)
  • 小型マイクロバス 26,235円(税込)

▼貸切バスの種類・大きさ・定員数こちらをチェック!
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新貸切バス料金体制のメリットとデメリット

お金と命、どちらが大事?

料金体制が変わってどんなに短時間の使用でも5時間分の料金を支払わなくてはならなくなったことで、「前はもっと安く貸切バスを借りられたのに…」、「短時間しか貸切バスを使わないのでなんとか安くしてほしい!」などのお客さまからの声が寄せられることもございます。

確かに短時間で貸切バスを借りるときにリーズナブルにご利用いただけなくなってしまったことは、お客さまにとっては大きなデメリットといえるでしょう。

ただし、こうした料金の見直しや整備を徹底することの背景には「貸切バスの安全な運行を第一に考える」という社会全体の要望と、それに応えるべく法改正を行った行政の「利用者を守る思い」があることを忘れてはいけないと思います。

やはり多少貸切料金が高くなったとしても、安全には変えられないと思います。実際に法改正が行われてからバス会社全体への安全に対する意識は向上しています。

短時間で貸切バスをご利用する際にお手軽価格で利用することができなくなった反面、安心して貸切バスを利用できるということは、結果的にはお客さまにとっては大きなメリットになるのではないかと思います。

貸切バスの短時間利用の場合の料金まとめ

短時間レンタルのバス料金まとめ

貸切バスの場合、タクシーなどとは違い、短時間利用であってもあまり安くなりません。その背景には「大勢の人の命を預かり、運行していること」が上げられます。つまり、タクシー以上に高度な安全対策が求められるということです。

たとえ30分、1時間の利用であっても、よりハイレベルの安全対策が取られていなければならないことには変わりありません。「安全」はお金で買えるということを忘れないようにお願いします!

▼貸切バス短時間利用の料金について

  • 貸切バス利用時間が30分であっても最低利用時間は5時間として計算
  • バス料金は国土交通省が定めた下限額を下回らないことと決められている
  • 料金には「利用時間」と「走らせた距離」、「安全対策のためのコスト」を含めた設定になっている
  • 深夜早朝(22時~5時)にかかる運行は割増料金になる
  • 運転手が1人で運転してよい時間・距離は決まっており、それをオーバーする場合は交替運転手が必要で割増料金になる
  • 電動リフト付きバスなど、特殊なバスは割増料金になる場合が多い

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