貸切観光バスにトイレ付きがほとんどない理由

貸切観光バスにトイレ付きがほとんどない理由、法律の問題も大きく関係していた!?

高速バスにはあるけれど、貸切観光バスにはほとんど付いていないものなーんだ。「それはトイレ!」

「貸切バスの達人」から見積りを取り寄せるお客様の中には「どーしてもトイレ付バスがいい」と依頼される方が少なくありません。

貸切バスではほとんど存在しないトイレ付バス
(バステクin首都圏2022より)

トイレ付の貸切バスを借りたい理由としては主に以下のようなものがあるようです。

  • 行楽シーズンで車の渋滞が心配、SAも混雑していてトイレ休憩に時間がかかりそう
  • 年配者が多くトイレが近い、バスの中でお酒を飲みたいのでトイレ付だと安心
  • 視察等でバスを利用するが行き先周辺にトイレがない

他にもいろいろな事情はあると思いますが、だいたい上記のような3つの理由に集約される気がします。

「撮影や視察で周りに建物、施設が一切ないところで長時間過ごすので、トイレがついてるバスじゃないと困る」というのは確かに切実な理由ですね。

「貸切バスの達人」に参加しているバス会社さんを調査!トイレ付バスはある?

写真のバスは「はとバスのピアニシモⅢ」(バスフェスタ2015にて撮影)
写真:はとバスの「ピアニシモⅢ」(バスフェスタ2015にて撮影)

「貸切バスの達人」に参加していただいている全国のバス会社さんが持っているバスのタイプ(約4千台弱)を調査してみたところ・・・。

貸切バスの場合、トイレ付きバスというのはほとんどないという結果に!

トイレ付きバスはわずか51台。全体の1%程度ということが分かりました。

バブルの頃、たくさんつくられたという話を聞きますが、少なくても現在は「ない」に等しい状況です。

トイレ付バス50台は大型バスで、もう1台は中型バス。小型バス、マイクロはもちろんありません。

これじゃあ手配は無理だよね・・・。

では、なぜ、観光バスにはトイレがついていないのでしょうか?理由を調査してみました!

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法律上はバス走行中、トイレを利用することは原則できない!?

バス走行中はシートベルト着用義務がある
ウィラーの高速バス「LUXIA(ラクシア)」

自家用車を含め、バスに乗車する際、走行中は後部座席もシートベルトの着用が2008年6月から義務化(妊婦さんは除く)されました(道路交通法第71条の3)。

運転席にシートベルト取り付けが法律で決められたのが1969年。

その後、1971年に高速道路・自動車専用道路を走行する際は、運転席のシートベルト着用義務の法律が発令されましたが、一般道ではまだ義務化されていません。

一般道での着用が義務化されたのは1987年。2008年には後部座席(妊婦さんを除く)も着用義務となった、というわけです。

つまり、道路交通法上はバス走行中にシートベルトを外して、車内を移動し、トイレに行く、という行為は厳密にいえば“シートベルト着用義務違反”ということになります。

サービスエリアや観光施設などの駐車場にバスを停めてなら利用できる、とすると、バスにトイレが付いている意味があまりないのでは・・・。

高速バスにトイレ付バスがあるのはなぜ?

高速バスにはトイレ付バスがある
(西武バス60周年記念大感謝祭より)

高速バスは比較的トイレ付バスが運行されている印象です。なぜ、高速バスにはトイレ付バスが存在するのでしょうか。

高速バスは都市間交通を担う運動手段。比較的長時間・長距離を走るものが多く、高速道路を利用して運行されているものです。

しかし、高速道路の場合、天候や事故などにより、通行止めが発生する可能性があります。一般道なら迂回することもできますが、高速道路ではインターの出口までは降りることができません。

また、繁忙期では渋滞が予想され、思うようにトイレ休憩をとるのも難しいでしょう。そんな事態に備えて、特に長距離移動する東京~大阪間の夜行バスなどに付けられていることが多いようです。

高速道路走行中は高速バスも「トイレは利用できません」

東京発・大阪行きの夜行バス
東京と大阪間をつなぐ夜行バス

私自身、何度も東京から大阪行きの夜行バスを利用していますが、原則、走行中のトイレの利用はお控えくださいでした。もちろん、高速道路走行中はNGです。

ウィラーエクスプレスが運行しているレストランバスに、何度か乗車したことがありますが、こちらも高速道路を走行中はトイレの利用禁止、レストランスタッフのサービスも行われません。

一般道であれ、高速道路で渋滞してノロノロ運転をしていても、やむを得ず急ブレーキをかけて緊急停止する場合があります。その際、転倒してケガをしてしまうかもしれません。

せっかくの旅行が台無しになってしまわないよう、トイレ付バスであっても休憩ポイントでこまめにトイレに行くというのがおすすめです。

トイレを付けるとバス料金が高くなる、利用後の掃除が大変!?

高速バス・夜行バスの仕様を見ると、主にバスの後部、もしくは、地下にトイレを付けているケースが多いようです。

いずれにせよ、トイレを付けると座席数が減ってしまいます。

以下の写真は大阪で5月27日(金)に開催されたぽると出版主催のイベント、「2016バステクフォーラム」で展示された東京バスの三菱ふそう「エアロエース(ルーフスポイラー付き)」の車内の例です。

東京バスグループ/エムビーエムサービスの共同展示車両
東京バスグループ/エムビーエムサービスの共同展示車両

後部座席4席分をつぶしてトイレにしています。

東京バスグループ/エムビーエムサービスの共同展示車両のトイレ
トイレの中はこんな感じ

トイレの中はこんな感じ。

また下の写真は地下にトイレを付けている例です。

西日本JRバス(都市間高速車)のトイレは地下に

「2016バステクフォーラム」で展示されていた西日本JRバス(都市間高速車)のもの。

西日本JRバス(都市間高速車)トイレの中
地下についているトイレの例

こちらもやはり、車体下についているトランクルームスペースを使いつつ、座席4席分ぐらいはつぶしている感じになります。

誰がいちばん観光バスを頻繁に借りているのかを考えると、やはり旅行会社。自分たちの企画したバスツアーでバスを貸切って参加者を募り、催行しています。

旅行会社主催のバスツアーでおなじみの光景
※写真はイメージです

この場合、できるだけたくさんの人がバスに乗車できる方がコストを下げることができるので、座席数が少なくなるトイレ付きバスは敬遠されます。

バス会社としては、あまり借りてくれないトイレ付きバスを持つよりもトイレ無しバスを多く持ち、どんどん借りてくれた方がうれしいですよね?

また、トイレ付きにすると、当然、使用後は掃除をしなければなりません。その分の処理に手間や費用、時間がかかるため、トイレ付きバスは通常の値段よりも高くなるのは当然のこと。

しかし、高速道路走行中は使用できない、一般道走行中でもトイレの利用は控えるべき(法律違反になる)としたら、高い貸切バス料金を払ってトイレ付バスを借りる意味が本当にあるのでしょうか・・・。

トイレ付バスを借りても、1人1回しか使えない!?

いすゞ自動車さんの大型観光バス「ガーラ」につけられるトイレの仕様(一例)を見てみると・・・汚物タンク容量は約47リットル。だいたい約50回使用できる計算になるそうです。

この汚物タンクはバス用トイレメーカーによってまちまちで30リットル~50リットルぐらいのものが主流といいます。

プレミアム仕様トイレの例(写真提供:いすゞ自動車)
プレミアム仕様トイレの例(写真提供:いすゞ自動車)

つい先日、某旅行会社のトイレ付きバスツアーに参加してきましたが、添乗員さんから

「トイレは30回ぐらいしか使用できないので、緊急時以外は使わないでください!その分、トイレ休憩を多めにとります」

というアナウンスがありました。

実際、ツアーの間、トイレを利用したのはお1人でしかも1回のみ。
(緊急とはいいがたいタイミングでしたが・・・)

果たして、このツアー、トイレ付きバスで行く意味はあったのか・・・??

大型バスの定員は約45名。30回しか使えないなら、1人1回も使えない計算になります。47リットルの大きめタンクでもかろうじて1回のみ。

「宴会したいからトイレ付きがいい!」といっても1人1回もいけないトイレなのについている必要があるのか疑問です・・・。おそらく、目的地に着く前にトイレは使用禁止になってしまいますよね??

中には約95回使用できるものもあるようですが、観光バス路線には装備されていることはまずないでしょう。

なんとなく、高速バスや夜行バスのイメージで

「トイレ付きなら渋滞しても安心!」
「お腹の調子が悪くなっても大丈夫!!」

そんな思いでトイレ付きを希望しているのだと思いますが、回数制限を考えるとあまり意味がないようです。

まして、泊りがけでバス旅行に出かける場合、2日目は利用できない可能性大となります(途中でトイレを清掃することができないので)。

トイレ付バスを借りるより、休憩を多めにとる方がコスパ良し!

バスの運行は2時間に1回、必ず休憩を入れる決まりになっています。

これは、国土交通省が発表した「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」にも明記されており、連続運転時間はおおむね2時間まで、運転時間4時間ごとに合計30分以上とることとなっています。

心配であれば、もちろん1時間に1回とることも可能で、一般的なバスツアーでは、だいたい1時間30分に1回はトイレ休憩をとってくれているようです。

高速バスや夜行バスなどでは、時間通りにバス停や目的地まで運行しなければならないため、お客さんの要望でトイレ休憩を増やしたり、減らしたりできないという事情があります。

その点、貸切バスならお客さんの希望通りに行程を組めるので「行きは宴会でお酒を飲むのでトイレ休憩を多く」とか「帰りは少な目でOK」という具合で、融通が利くのがポイント。

幹事さん、トイレ付きバスを無理して借りるより、トイレ休憩の回数を増やしてお出かけくださいね!

※ちなみに「どうしてもトイレ付バスを借りたい」「トイレ付バスの仕組みについてもっと詳しく知りたい」という方は京王電鉄バスさんの取材記事を参照してください。

トイレ付貸切観光バスまとめ

  • 緊急時を除き、そもそもバス走行中にトイレを利用するのは原則NG(シートベルト着用義務違反になる)、特に高速道路走行中は利用不可
  • トイレ付バスは座席数が少ない+清掃の手間でコストがかかるため、所有するバス会社が少ない
  • トイレ付バスは、通常タイプよりも貸切料金が高い
  • バスのトイレは回数制限があり、何度も使えない!
  • 料金の高いトイレ付車両を借りるより、通常タイプを借りて休憩を多めにとるほうが安心&お得!

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■写真提供

いすゞ自動車株式会社

「2016バステクフォーラム」
主催:株式会社ぽると出版(バスラマインターナショナル)
※車両展示より
・東京バスグループ/MBMサービス(共同展示)
三菱ふそうエアロエース ルーフスポイラー車
・西日本JRバス(都市間高速車)
詳しくはこちら≫

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