路線バスはなぜシートベルトをしなくていいの?バスのシートベルト事情
車に乗る人にとって命綱ともいえる「シートベルト」。
2008年からは高速道路だけでなく一般道路でも後ろ席を含む全席でシートベルトの着用が義務づけられるようになりました。
運転する人や乗車する人のシートベルトの着用を心掛ける意識も年々高まっているように感じられますね。
そんな時代の流れの中で時々、「なぜ路線バスではシートベルトをしなくていいの?」という声がちらほら。
確かに路線バスにはシートベルト自体がついていないですよね?
そこで路線バスや高速バス、貸切バスのシートベルト事情について調べてみました。
※路線バスについてのご質問等は、ご利用になる各バス会社に直接お問合せください。
「路線バス」はシートベルトをしなくていい
自動車の装備は「道路運送車両の保安基準」という国の基準で細かく決められていて、シートベルトについてもきちんと決まっています。
乗車定員11人以上の路線バスには、そもそもシートベルトの設置や装着の義務がありません。
これはシートベルトの着用が義務づけられたときに、路線バスだけは除かれたためです。
このため路線バスにはもともとシートベルトの備えつけはありませんし、もちろん着用も義務づけられていません。
路線バスでシートベルト着用義務が無い理由を考えてみた
たくさんの人が乗車する路線バス。
高速バスのように座席ひとつひとつにシートベルトをつけるとどうしても乗車人数が少なくなってしまいますし、乗り降りも大変になってきてしまいます。
その点を考慮されて今の形にまとまったのではないかと想像されます。
路線バスは高速道路を通ることがないということもシートベルトをつけなくてもいいという判断基準の一つだったかもしれません。
個人的にはこうした様々な事情を考えるとシートベルトがないのも仕方がないと思う反面、路線バスは立って乗車する人も多いので事故が起こったときの不安はどうしても残ります。
「高速バス」「貸切バス」ではシートベルトは必要!
路線バスがシートベルトをしなくてもよいのなら、高速バスや貸切バスでもシートベルトの着用はいらないのでしょうか?
答えはNO!
高速道路を通過することも多い、高速バスや貸切バスについてはシートベルトの備えつけの義務が「道路交通法」で定められています。
また、平成28年1月15日に長野県軽井沢町で発生して15人が亡くなったスキーバス事故が大きな社会問題となりました。
そこで、国土交通省の有識者会議「軽井沢スキーバス事故事故対策検討委員会」によって「安全・安心な貸切バス運行を実現するための総合的な対策」がまとめられました。
「車内アナウンスでシートベルトの着用を促すこと」
「高速バス・貸切バスではシートベルトが座席にいつでも着用できるように設備を整えること」
この決まりによって、バス会社に↑のような対応が求められました。
ドライバーから乗客に対してシートベルトをつける注意を徹底するようになりました。
一般道でもシートベルトしなくちゃダメ?
バスでのシートベルト着用は高速道路はもちろん、一般道でも必須。
警視庁の規定によると、高速バスや貸切バスを利用する際は必ず1人につき1席を確保することが必要で、シートベルトの着用も義務づけられています。
- 高速道路:ベルトの着用義務あり、違反すると切符を切られる
- 一般道:ベルトの着用義務あり、違反しても切符は切られない
- 身体上の疾患でベルトができない人は、義務免除
現在、補助席であってもシートベルトのない座席があるバスはナンバーがもらえません。
ただ、昔ナンバーをもらったバスは補助席にシートベルトがない車もあるので、下記のような例外も存在しています。
- 0歳~12歳の子供3人が、2席に乗車する場合
- 座席にシートベルトがない場合
バスでシートベルトを締めなかった場合の罰則
高速バスや貸切バスで高速道路を走行中にシートベルトを締めていないと、バス会社が行政処分を受けます(基礎点1点)。
シートベルトをしなくても、乗客には罰則がないので後部座席のシートベルトは一般道では外してしまう人も多いのではないでしょうか?
警視庁とJAF(日本自動車連盟)が合同で行った2016年のシートベルト着用状況調査調査によると、高速道路での後部座席シートベルト着用率は71.8%だったのに比べ、一般道では36.0%という結果になりました。
(2016年10月1日(土)~10月10日(月・祝)で全国882ヶ所にて軽自動車・小型自動車・普通自動車を対象に調査)
2008年にシートベルト着用が義務化されてから、後部座席のシートベルト着用率は義務化前の約6倍になったものの、まだまだルールが根付いていないように感じますね…。
国土交通省の情報によりますと、万が一の事故があった場合に、シートベルト非着用者の到死率は着用者の14倍という結果が報告されているそう!
また、シートベルトを着用しないで事故に遭い、被害が大きくなった場合は被害者の過失になります。
事故の被害者であっても、シートベルトの着用義務を守っているといないとでは、補償にも差が出る場合があります。
もしものときに自分をしっかり守るためにも、やはりシートベルトは必ず着用しなくてはいけませんね。
警視庁HPでシートベルトの注意がまとめられています。
バス車内の注意事項もあわせてご確認くださいね。
バスの補助席にもシートベルトの設置が義務化
シートベルトの着用に関しての意識が高まっている高速バス・貸切バス業界。
2016年11月に道路運送車両の保安基準等の改正が発表され、これまでシートベルトの設置義務が除外されていた補助席にもシートベルトの取りつけが義務化されました。
これによって補助席でもシートベルトの着用が義務づけられることになります。
現在、貸切バスの補助席のシートベルト状況は下記のとおり。
- 大型観光バス :補助席シートベルト有(※古い車種は無い場合も)
- 中型観光バス :補助席自体無し
- 小型観光バス :補助席シートベルトは基本的に無し
- 小型マイクロバス:補助席シートベルトは基本的に無し(ここ数年の新車はついているが、まだまだ少数派)
- ミニバス :補助席自体無し
大型観光バス以外のバスの補助席には、シートベルトがついていないことがほとんどのようです。
でも今後作られる新型観光バスにはシートベルトがとりつけられますし、今まで使っていた旧型バスも遅くても平成33年までにはシートベルトがとりつけられることになりそうです。
(下記、国土交通省発表資料参照)
バスの補助席のシートベルトとりつけの適用時期(予定)
車両総重量12t超のバス:新型車 平成29年11月
継続生産車:平成30年11月上記以外の自動車:新型車 平成31年11月
継続生産車:平成33年11月
バスの通路に設置されているため、正席に比べ安全面で不安が残る補助席。
シートベルトのとりつけが義務化されるのはとてもいい流れですね。
貸切バスのシートベルトは2種類ある
実はシートベルトには2種類の形があるって知ってましたか?
1つは「2点式」で、腰部分をとめるタイプ。
もう1つが「3点式」で、肩から斜めにベルトを伸ばして、腰の部分でとめるタイプ。
大型バスや中型バスのシートベルトはほとんどの座席が2点式です。
一番前の座席だけは、急ブレーキをかけた時に前に飛び出してしまって危ないので、3点式のシートベルトが付いています。
一方で、マイクロバスは2012年の改正により3点式のシートベルトしか製造されなくなっています。
※法改正以前に製造された車両はまだ2点式シートベルトで運行していて、これは違法ではありません。
なお、チャイルドシートは3点式のシートベルトで固定するタイプが多いので、バスに取り付けることは難しそう。
チャイルドシート事情についてはこちらをご覧くださいね。
貸切バスにチャイルドシートは取り付けられる?
バスのシートベルト事情まとめ
路線バスや高速バス・貸切バスのシートベルト事情について調べてきました。
同じバスといっても、路線バスと高速バス・貸切バスではシートベルト事情が全く違うんですね~。
高速バスや貸切バスのシートベルトの着用が徹底されるための取り組みや、補助席にもシートベルトをとりつけなくてはいけない保安基準の改正は、乗務員の安全を守るための前向きな取り組みとして評価してもいいと思います。
みなさんも高速バスや貸切バスに乗車する際は、運転手さんの指示に従って正しくシートベルトを着用しましょうね。
※路線バスについてのご質問等は、ご利用になる各バス会社に直接お問合せください。
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