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貸切バスの安心・安全運行は、バス利用者の協力も欠かせない!「運輸事業の安全に関するシンポジウム2017」

こんにちは!編集部Iです。

国土交通省主催の「運輸事業の安全に関するシンポジウム2017」を取材してきました。今年のテーマは「運輸安全マネジメントのスパイラルアップ~今日的な課題への対応~」です。

国土交通省主催「運輸事業の安全に関するシンポジウム2017」

シンポジウムは昨年と同じ、昭和女子大学・人見記念講堂で開催。雨の中、全国から運輸事業に携わる事業者さんをはじめ、大勢の人が聴講に訪れていました。

運輸マネジメント制度を導入して11年。今後、各事業者がいかにスパイラルアップを図っていくか、また、運輸事業を取り巻く環境の変化に合わせた課題への取り組みなどについて講演が行われました。参加できなかった事業者さんのために、わかりやすくレポートしたいと思います。

■もくじ
第1回国土交通大臣表彰式が行われました
運輸安全マネジメント制度導入後、運輸事業の安全性向上を実感
貸切バスでお客様の死亡事故ゼロを目指す!
今までと同じ安全への取り組みでは、対処できない事態が増えている?
5年先・10年先を見据えた視点、安全を決してないがしろにしない固い決意
お客様(利用者)の理解・協力も不可欠!
運輸事業者の安全に対する取り組み事例をダイジェストにご紹介します!
安全への取り組みは、事業者一つ一つがオーダーメイド

第1回国土交通大臣表彰式が行われました

まず初めに、主催者である国土交通省 国土交通大臣政務官を務める高橋克法氏より、開催のご挨拶がありました。

国土交通省大臣政務官より開催のあいさつ

さらにシンポジウムスタート前に、今年は運輸の安全に大きく寄与した企業やグループを表彰する「第1回国土交通大臣表彰式」が行われました。

第1回国土交通大臣表彰式

最初の受賞グループは「運輸安全マネジメント普及・啓発推進協議会」です。この協議会は、自動車モード(トラック、路線バス、貸切バス、ハイヤ・タクシー)に特化し、なかなか運輸安全マネジメント制度が浸透しない中小事業者への普及・啓発を推進するために平成24年に設立したもの。

民間リスクマネジメント会社、運輸関係等団体、国土交通省が参画しています。平成25年より、運輸安全マネジメントセミナー(民間機関等が国土交通省の認定を受けて実施する認定セミナー)を開始。平成28年度までに延べ995回実施。受講者は延べ3万人を超えました。今回はこういった活動が評価されての表彰です。

この他、大臣官房危機管理・運輸安全制作審議官より、企業間の枠を取り払い、飛行機の安全運行に協力し合った「JAL-G FDM/ANA-G FOQA」、実技中心の安全運転研修を行っている「クレフィール湖東 交通安全研修所」が表彰されました。

大臣官房危機管理・運輸安全制作審議官表彰

運輸安全マネジメント制度導入後、運輸事業の安全性向上を実感

シンポジウム、最初の登壇は、国土交通省 大臣官房運輸安全管理官・三上成順氏です。昨年、大規模事業者に対しては、さらなる安全性の向上に向けたスパイラルアップ支援が課題、中小規模事業者に対しては、制度の理解促進を図るとともに、その取り組みを支援することが課題というお話でした。

国土交通省・三上氏登壇

この1年で運輸マネジメント評価の対象である約9,000者中、約5,700者(平成29年3月末現在)の運輸事業者を評価。年々、取り組むべき改善項目が少なくなり、安全意識、取り組み向上を実感しているといいます。

残り3,300者は、制度発足後に増えた事業者ということで、今後はこの事業者に対して評価・支援を行っていくのが課題。

貸切バス事業者にしぼってみると、バス保有車両数が200両以上が96者、200両未満が4,083者、義務付け対象外となる小規模バス事業者は約2,200者あるといいます。

平成33年度末までには、200両未満のすべての貸切バス事業者の安全管理体制を確認予定。義務付け対象外の事業者へは、自主的取り組みの促進に向けたインセンティブの付与、セミナー等を通じた普及・啓発を実施するとのこと。

運輸安全マネジメントは、貸切バス事業者が主体となり取り組むこと。行政はそれを支援し、一緒に安全性の向上へ向けた仕組みづくりに取り組んでいきたいとおっしゃっていました。

貸切バスでお客様の死亡事故ゼロを目指す!

平成28年に発生した軽井沢スキーバス事故以降、道路運送法を改正するなど、安全運行の管理体制強化に取り組んできました。改正ポイントを要約すると・・・

■バス事業許可の5年ごとの更新制導入
■事故や違反を起こしたバス事業者への安易な再参入・処分逃れを阻止
■バス事業者に対する監査(民間指定機関に委託し、事業者が費用を負。問題があれば国が監査に入り、処分も)
■罰則の強化(安全対策を怠った悪質業者の罰金が100万円以下から1億円以下に引き上げなど)

特に、貸切バス事業者へ、運輸安全マネジメント評価を重点的に実施し、今後5年間で安全管理体制を確認。5年ごとの更新後、行政処分を受けた場合、国の評価とは別に、認定事業者による運輸安全マネジメント評価を受けることが必要になっています。

つまり、国と認定機関のダブルチェックを受ける必要があるということですね。

この他、国交省では、10年間の運輸安全マネジメント評価を通じて各事業者の取り組みを確認してきました。これらの事例集を集め、公表しています。他社の取り組みを知ることで、自分たちが取り組む課題が明確になり、具体的な施策を考えていく最大のヒントになるはず。ぜひ、一度、目を通してみてはいかがでしょうか?

また今年からスタートした「安全統括管理者会議」。普段は各会社ごとに活動している、安全統括管理者を全国単位、地方ブロックごとにネットワークを構築。それぞれの取り組みを全国で情報共有したり、ITを活用したオンライン相談を実施するなど、行政との連携を強化しています。

ビッグデータを活用し、情報通信技術を活用するなど、より高度な安全管理体制を構築し、運営するための取り組みも進めています。

今後、貸切バス事業者が原因の乗客死亡事故ゼロを目指すとともに、10年以内に乗客の不祥事故半減が目標。そのためには、国を始め、各事業者の運輸安全マネジメントへの取り組みや、スパイラルアップはますます重要ということですね。

今までと同じ安全への取り組みでは、対処できない事態が増えている?

続いて登壇したのは、昨年に引き続き、小松原明哲氏(早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科教授)の基調講演です。

小松原明哲氏・早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科 人間生活工学研究室 教授

私たちを取り巻く環境が大きく変化し、運輸の安全・安定的サービス提供を脅かす要素がいままでと違ってきていることをテーマに上げていました。

例えば、社会的要因として、世界各地で起きているテロ、コンピュータウイルスを使ったサイバーテロ事件など、日本もいつ標的になってもおかしくない事件が起きています。

いままでは何か不祥事が起きてからのマスコミ対応が危機管理というイメージでとらえていました。でも今後は、自分たちの弱点をあらかじめ知っておき、攻められた場合、どのように迅速にリカバリーできるか?そのためには、自分たちが「テロリスト」の視点に立って考え、行動を予測する必要があります。

何か起きてからの危機管理から、起きる前にあらゆる危機を想定して備えるものへ。「起きるわけがない(根拠のない安全性への過信)」や「防ぎようがない(いつ起きるかわからないし)」という考え方ではなく、起きると想定して考え、どのように行動するかシュミレーションしておくことが大切とお話されていました。

この他、自然的要因として、外来有害種の進入(ヒアリやスズメバチなど)、感染症の流行(関空ではしかが大流行して機能停止を起こしそうになったなど)、異常気象が日常的になっていることなど、予測を大きく超える事象が発生しています。

技術的要因では、施設の老朽化(バス業界でいえば、バスの買い替えがままならないことなど)、新技術の導入でIT依存が高くなる(トラブルが起きたら対処しきれないなど)ことがあげられるます。

そして最も懸念されるのは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック(対象要因)。観光庁によると、2017年9月には、訪日外国人が2,000万人を超えたといいます。最近では、外国人によるレンタカー事故が急増していることが問題になっています。

また、宅配便取扱量の急増による配送員への負担(人的要因)などもニュースなどで、よく目にしているのではないでしょうか?

老年人口(65歳以上)が年少人口(0~14歳)を逆転し、その格差は年々広がっています。運輸業だけではありませんが、今後ますます人材不足は深刻化していくことでしょう。

そうなった時、ドライバー教育の見直し(高齢者や女性などに向けた指導、職場環境、体制作りなど)、自動化運転など、高度なIT化に対応した安全対策の見直しが必須。いままでと同じやり方で安全が守られていくとは限らない、柔軟な視点と対応が求められているとおっしゃっていました。

5年先・10年先を見据えた視点、安全を決してないがしろにしない固い決意

起こったことを分析し、次に活かすだけでは不十分。5年先、10年先を見据えた中長期的な安全輸送や安全管理体制を構築していくことが大切です。では、具体的にどのように考えていったらいいのでしょうか?

小松原教授によると、先ほど挙げた5つのハザード(社会要因・自然要因・技術要因・対象要因・人的要因)にそって、懸念される事項を各事業者ごとに洗い出し、それに対し、どのような安全対策を講じればいいか考えておくことが大切といいます。

ハザード(要因) 具体的に懸念される事項 安全対策(何をすればよいか?)
社会的要因 例)会社のシステムに進入され、顧客の個人情報が盗まれる可能性など
自然要因 例)地震で津波が来た時、危険な道路の確認など
技術要因 例)大型バスはASV車に買い替えていくが、安全装置のないマイクロバスの対策はどうする?など
対象要因 例)東京オリンピックの年、貸切バスの台数が不足する、どうする?など
人的要因 例)子どものいる女性ドライバー、シフトはどうする?など

(例文以外は「運輸安全マネジメントの今日的課題」講演者:小松原明哲氏のスライドより引用)

そして2つ目の課題として、真の意味での安定輸送実現をあげています。安定した輸送を行うため、安全性を後回しにしないこと。

鉄道やバス、飛行機などが遅れたり、運行停止してしまうと混乱が起きます。運輸事業はまさに「電気・ガス・水道」と同じ、社会的インフラなのですと小松原さん。どの事業者もその自覚をもって、安定した運行ができるようにしなければなりません。

でも、提示運行を追求するあまり、安全性を軽視したり、経済活動を優先すると大きな事故が起きます(2005年4月に起きたJR福知山線・脱線事故など)。

安全を徹底した結果、安定的な輸送が実現できるもの。何か安全を阻害する可能性のあるものを見つけたら「躊躇せずに」運行を中止する決断も必要だとおっしゃってました。

しかしながら、運輸事業には予測不能なさまざまな要因があります。そこで3つ目は、被害を最小限に食い止めるための取り組みが大切になってきます。

小松原さんは、事故(トラブル)が起きたとき、早期にサービスを復旧し、再開するために必要なのは運輸事業の「レジリエンス」力だといいます。

レジリエンス(Resillience)とは、生態系が持つ自発的な治癒力を意味します。困難な状況にかかわらず、しなやかに粘り強く適応して生き延びる力ともいわれます。レジリエンスな組織づくり、現場づくりが、今後の研究課題になりそうです。

お客様(利用者)の理解・協力も不可欠!

4つ目は、運輸サービスの利用者にも協力を求めていくこと。利用者が、安全を阻害する要素にならないためには、ていねいに理解・協力を求めていくことが必要だを小松原さん。

さらに、旅客間の相互支援や援助も大切とのこと。外国人や目の不自由な人への協力。体調を崩した人の介護など。限られた人員のスタッフだけで対応できない場合、旅客同士で助け合う場面も必要になってくるでしょう。

電車やバスで毎日起きている遅延。駆け込み乗車や迷惑行為・・・。最近では痴漢を疑われた男性が、線路に飛び降りて逃げるという報道も話題になりました。

バスが目の前で行ってしまうのは腹立たしい気持ちはよくわかります。「ちょっとぐらい待ってくれても・・・」という声もよく聞きます。でも、各バス停で同じように考える人がいて、さらにちょっとずつ遅延していったらどうでしょう?結局、バスがなかなか来ない!混んでて乗れない!!と不満を抱くのではないでしょうか?

雨の日は電車もバスも遅延しがち

(写真はイメージです)

電車のドアが閉まりかかっているのに、むりやりカバンや傘を差し込んでドアを開けさせる行為、よく見かけますよね。

貸切バスでも、ちょっとぐらい帰る時間が遅くなったっていいじゃないか。近くに行きたいところがあるから、当日急に立ち寄ってほしいとお願いする。そういう依頼もよく聞きます。

当事者にとっては「ちょっとしたこと」でも、その「お願い」に対応することで、大幅な遅延を招いたり、運行をストップせざるをえなくなったり、安全が阻害されることだってあります。

安全運行に取り組むのは、国と事業者だけではありません。旅客の協力なくして、安全運行は実現できません!私たち利用者も安全運行に一役かっているのだということを、自覚しなければならないと感じました。

運輸事業者の安全に対する取り組み事例をダイジェストにご紹介します!

今回のシンポジウムで登壇したのは、鉄道事業からは「近鉄日本鉄道株式会社」、バス事業からは「ヤサカ観光バス株式会社」、航空事業からは「株式会社AIRDO」の3社です。

【近鉄日本鉄道株式会社の事例】

近鉄日本鉄道・和田林氏

●テロ対策などさまざまなハザードを想定した取り組み

近鉄からは、昨年に開催された「G7 伊勢志摩サミット2016」での安全対策ついて。サミットの舞台となったのは、三重県の賢島。本土とは2本の橋と近鉄の志摩線のみでつながっています。

このため、テロ対策の一貫として、開催1週間前には賢島の2つ手前までの駅までで運行を中止しました。近鉄グループの全社員へ「テロ警戒のポイント」が書かれた携帯カードを配布。鉄道関連の職員に対しては「鉄道テロ対応マニュアル」を作成し、教育を徹底したそうです。

警戒期間中に、電車車内でジェラルミンケースが発見され、一時騒然となったことがあったそうですが、大学生(理系)の忘れ物と分かり、ほっとしたとか。普段とはことなる場所での警戒チェック、各関係機関との協力で無事、サミットを終了できましたとのこと。

この他、サイバーセキュリティ対策の強化、過去の重大事故(昭和46年の総谷トンネル列車衝突)を教訓とする語り部DVDの制作・視聴、南海トラフ地震を想定した対応マニュアルの整備・訓練、自社独自の雨量計と解析雨量を併用したゲリラ豪雨対策など、さまざまな対策に取り組んでいます。

●社員発案で鹿との接触事故を激減!

中でも一番興味深かったのが、野生の鹿対策。これは山間部を走る近鉄ならではのアイデアで、線路の脇に獣害防止ネットを設置。あえて、ネットとネットの間をあけて置き、鹿が線路を渡れるようにしてあります。電車運行中は鹿が横断しないように、超音波を出し、夜間はオフにしているそう。

この試みは社員の発案で導入したもので、それまで年間57件ぐらいあった接触事故が、1件のみまで激減させることができたそうです。

ドローンを使った外壁点検や鉄道新技術の研究、第三者との連携など、10年、20年先の安全をみすえた取り組みを続けている近鉄。これからもより高い安全の確保と、万が一の場合のレジリエンス力を感じた発表でした。

【ヤサカ観光バス株式会社の事例】

ヤサカ観光バス・野坂氏

●貸切バス新運賃・料金制度導入により安全対策を強化

創立60周年を迎えるヤサカ観光バス。京都、大阪、滋賀、兵庫と関西エリアに営業所を持つバス会社です。車両数は、大型バス127両、中型バス11両。従業員数は254名で、そのうち、ドライバーは135名が勤務しています。

バス事業への参入を規制緩和して以来、貸切バスの事故が続いたため、法令や規制が強化され、国土交通省から貸切バスの新運賃・料金制度が制定されました。これにより、経営の安定化が図られ、貸切バスの安全対策に積極的な設備投資ができたといいます。

所有台数全体の64%がASV車(衝突被害軽減ブレーキ搭載など)に買い替え済。デジタコ・ドライブレコーダー、乗務中の携帯電話対策としてIP無線機(全国で通話可能)を全車両に設置しています。

でも残念なことに、バス料金が値上がりしたことで、貸切バスを利用するお客様が、以前よりも減ってしまったとか・・・。確かに利用者側としては「より安く」バスを借りたいと思うのは当然のこと。でも、安全のためにはやむを得ません。できる範囲で協力していきたと感じました。

●貸切観光バスの運行に求められる高度なスキルと深刻なドライバー不足

現在の最も大きな課題は、ドライバー不足。かつては大型2種免許を持っていて、大型運転経験5年以上というのが採用条件でしたが、昨年から、普通免許保持者を会社負担で大型2種免許取得をサポートする養成制度をスタート。大型車運転の経験がない、特に20代前半の若年層を積極的に採用し、現在7名がこの制度を利用しています。

実は観光バスの貸切運行は、路線バスや高速バスとは異なる資質が求められます。安全運転は当然のこと、長時間・長距離でも快適に乗車していただけるよう、高度な運転技術が必要(スムーズなハンドルさばき、クラッチ操作、ブレーキ操作など)。

同じルートを走る路線バスや高速バスとは異なり、貸切バスは1運行ごとがすべてオリジナル。毎回違う道を通り、異なる条件の下、走らなければなりません。観光地の地理や道路状況を瞬時に把握するなどのスキル、そして、事故や渋滞、急病などで急なコース変更をしなければならないこともありますので、お客様からのリクエストに対応できる柔軟さも大切です。

そして「観光バス」だからこそ求められるのは、運転手一人一人は営業マンとしての自覚を持つこと。ほとんどの場合、ワンマン運行(6割以上)なので、お客様対応するのは自分自身。コミュニケーション能力、ホスピタリティなど、きちんとした接客ができる人物として育てることが大切だとおっしゃっていました。

以前、バス会社さんを取材したときに、貸切バスの運転手は最高峰!プロ中のプロがなるものという話をうかがったことがあります。バスドライバーにとって、貸切バスを担当するのは、大変なことなんですね。

【参考記事】
バスを運転するという仕事
安全にバスを走らせる!京王電鉄バスの場合

●お客様の理解と協力が、バスの安全運行を支える!

ヤサカ観光バスでは、健康起因による事故防止のため、労務管理の徹底や年2回の健康診断、SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査を行っています。判定で「要精密検査」となった場合は、適切な治療を行うことを徹底。今後は脳ドック検査の導入も検討しているそうです。

ここで大事なのは、私たち利用者の理解。貸切バスの場合、どうしてもタクシー感覚で「行先は当日決めたい」、当日「急に行き先を変更したい」、「もう少し観光したいから出発時間を遅らせて欲しい」などをお願いしてしまいがちです。

また、集合時間を守らずに、バスの運行が遅れ、到着時間が遅くなってしまったという報告もよく耳にします。

バスの運行は、運転手さんが管理しているわけではなく、国家資格を持つ「運行管理者」が決めています。運転手さん一人一人の勤務状況を把握。過剰勤務にならないよう、乗務開始時間や終了時間、休息日などを厳密にコントロールしているのです。

「30分ぐらい到着が遅れたっていいじゃないか」と思うかもしれませんが、乗務時間(拘束時間)が伸びてしまったため、翌日、決められた乗務ができなくなってしまうこともあるんです!

バスは大勢のお客さんの命を運びます。それゆえ、とても厳しい管理が必要なのです。安心してバス旅行を楽しんでもらいたい。そのためには、バス会社だけが安全管理をすればいいのではなく、私たち利用者の協力が欠かせません。皆さん、バスの安全運行のために、バス会社が、お客さまからの要望すべてに応えられないこともある、ということを覚えておきましょう!

【株式会社AIRDOの事例】

AIRDO・龍神氏

●雪が多い北海道ならではの苦労、徹底した整備管理

AIRDOは、現在、東京から北海道を結ぶ便をメインに、全12路線、1日36往復便を担っています。ご存じの通り、北海道は積雪量が多いため、除雪や凍結防止対策の徹底が求められます。道路が凍結すれば、お客様が転倒する恐れもあり、飛行機の安全だけではなく、乗り降りにも目配りが必要です。

以前、映画「ハッピーフライト」の中で子どもたちが羽田空港を見学するシーンがありました。その際、子どもの1人が、整備士さんの工具箱から工具を取り出し持ち帰ってしまいます。整備を終え、工具の数を確認したところ、紛失したことが発覚。工具箱の持ち主の整備士さんは、先輩から叱責され、全員がなくなった工具を探し、ごみ袋の中まで決死の捜索をするという内容でした。

たとえちいさな工具でも、万が一、飛行機のどこかに置き忘れてしまったことで、重大な事故を引き起こすかもしれません。このようなことのないよう、整備後は数をきちんと数え、管理するのが整備の基本だとおっしゃっていました。

●弱みを強みに変え、会社の成長を促すための行動

2014年にAIRDOでは、2回の厳重注意・業務改善を勧告されています。

1度目は、整備記録の不備。飛行機の部品の整備を行わなければならない期限を過ぎていたにもかかわらず、システム上では超過していないように処理し、先伸ばしていたケース。

2度目は、不適切な機長昇格。昇格訓練を兼ねたフライトで、定められた規定に従わない操縦があったにも関わらず、教官の酌量で副操縦士から機長へ昇格させていたケースです。

それぞれ「なぜそうなったか」を洗い出し、改善策をそれぞれ策定。問題の根本的な解決をはかったそう。これらの処分を風化させないこと。弱みを強みに変え、成長を促すためには何をすべきか?特に若手社員が中心になり、安全行動指針を決めたそうです。

「日本一安全な航空会社を目指して」という安全ビデオをを作成。新入社員の教育や全役職員対象のSMS定期教育で視聴し、行政処分を風化させないようにしています。さらに「イイねカード」を導入。助けてもらったり、アドバイスをしてもらったら、相手に「ありがとう」の気持ちをメッセージにしてポストに投稿。一定期間掲示後、贈られた相手へカードを届けているそうです。2016年度は3,106枚の「イイねカード」が投函されたとか。

この他、さまざまな安全意識向上活動をつづけているAIRDO。一度起きたら大惨事につながりかねない飛行機のよりハイレベルな安全航行のために、全社一丸となって取り組む姿勢が感じられました。

安全への取り組みは、事業者一つ一つがオーダーメイド

シンポジウム最後は、登壇者と国交省、損保保険ジャパン日本興亜株式会社の淀圭二郎氏によるパネルディスカッションです。司会進行は昨年と同じ、酒井ゆきえさん。

パネルディスカッション

事例紹介を行った事業者からは、安全を高めていくために、何が大切であるかの発言がありました。

まずは近鉄。「重大事故につながりやすい「ヒヤリハット」を報告しやすい企業風土づくりが大切」とのこと。「ヒヤリハット」を起こしたことに対し、懲罰を受けるという空気をつくらず、積極的に報告できるようにしておけば、より多くの事例が集まります。それにより、事故防止対策がとられ、安全性は高められるということ。そのことにより、運輸安全マネジメントのスパイラルアップできているのではないかとおっしゃっていました。

次はAIRDO。「会社への帰属意識、安全は自分たちで守るというモチベーションアップが大切」とのこと。職場を活性化し、活発な意見交換をすることで、新しい安全へのアイデアが生まれる。主体的に仕事にかかわり、安全について考えていく機運を育てていくことに注力しているそうです。

最後はヤサカ観光バス。「トップから社員までコミュニケーションがきちんととれていることが大切」とのこと。小さい会社なので、経営トップの考えが伝わりやすい反面、そのことばの伝え方一つで間違った方向に行きがち。待っててもヒヤリハットは報告されないと考え、積極的に声掛けするよう心掛けているそうです。特に事故を起こしたドライバーがいたら、みんなでドライブレコーダーを活用して状況を共有。教育に活かしていますとおっしゃっていました。

今回登壇した事業者さんの発言を聞いていると、それぞれの事業内容や規模、会社の風土などで取り組むべき課題や方法が違うことを実感。まさに安全対策は1社1社ごとのオーダーメイドという印象を感じました。

損保保険ジャパン日本興亜株式会社の淀氏は、さまざまな事業者のリスク管理を担当。日々、いろんな事業者から事故データが集まってきています。その中で感じるのは、事故そのものの損失よりも、間接的な損失が大きいということ。

保険料の値上がり、事故車の修理中に稼働できない人的・物的損失などなど。特に「PDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Act=改善の4段階を繰り返すことで、業務を継続的に改善する)サイクル」のうち、D(実行)とC(評価)がうまく行えない事業者さんが多いと感じているそうです。

いくら目標をたてても、それを実行し、評価するしくみがうまく働かなければ何の意味もありません。目標を達成するために何をすべきか、それがうまくいったのかどうかをどう評価するか。これらの設定をきちんときめ、より高い輸送の安全を実現していくこと。国、事業者、そして、私たち利用者も考えることが多い1日でした。

シンポジウムの様子

■資料提供・取材協力
国土交通省
「運輸の安全に関するシンポジウム2017」
http://www.mlit.go.jp/unyuanzen/unyuanzen_tk_000058.html

【開催日時】平成29年10月17日(火) 13時~17時
【開催場所】昭和女子大学人見記念講堂
【講演内容】
●主催者挨拶:高橋克法(国土交通大臣政務官)
●行政からの報告:三上誠順(国土交通省大臣官房 運輸安全管理官)
●基調講演:小松原明哲(早稲田大学 理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科 人間生活工学研究室教授)
●運輸事業者からの報告:
和田林道宜 (近鉄日本鉄道株式会社 代表取締役社長)
野坂高弘(ヤサカ観光バス株式会社 運輸部部長)
龍神恒夫(株式会社AIRDO 取締役・安全統括管理者)
●パネルディスカッション
<コーディネーター>酒井ゆきえ(フリーアナウンサー)
<パネリスト>
小松原明哲、和田林道宜、野坂高弘、龍神恒夫、淀圭二郎(損害保険ジャパン日本興亜株式会社 理事 リテール商品業務部長)、三上誠順(運輸安全監理官)
※敬称略

【国土交通省関連記事】
「運輸事業の安全に関するシンポジウム2018」
「運輸事業の安全に関するシンポジウム2017」
「運輸事業の安全に関するシンポジウム2016」

【NASVA関連記事】
「第11回NASVA安全マネジメントセミナー」
「第13回NASVA安全マネジメントセミナー」

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