注目の安全技術や観光バス・路線バス・高速バスが大阪に大集結!「2018バステクフォーラム」
バスに関連する最新技術等を体感できるイベント「2018バステクフォーラム」が、2018年5月25日に大阪で開催されました。
バステクフォーラムは、バス業界情報誌「バスラマ インターナショナル」を発行する株式会社ぽると出版が主催する恒例イベントです。
会場の舞洲スポーツアイランド・空の広場(大阪市此花区)には、バスメーカーのデモカーや、バス事業者が実際に運行している路線バス車両など、20台が出展されました。
また、バス関連用品やサービスなど、バス運行を支えるさまざまな事業者のブースもたくさん軒を連ねました。
主催者であるぽると出版によると、来場者は過去最大数となり、さらに海外からの来場者もあったそうです。回を重ねるごとに認知度が上がり、ますます注目を集めるバスイベントになっているのがわかります。
1. 初お目見え!ドライバー異常時対応システム「EDSS」の実力とは?
2. 2019年施行の衝突被害軽減ブレーキ第2段階規制に適合する「ABA3」体験乗車も実施
3. 現役バスドライバー運転体験で大人気!中国製観光バス「オノエンスター」
4. 「バステクフォーラム」で編集部が注目!魅力的な展示車両のご紹介
5. バス火災対策の強い味方!エンジンルーム自動消火システムの実演
初お目見え!ドライバー異常時対応システム「EDSS」の実力とは?
今年のバステクフォーラムで特に注目を集めたのが、日野セレガに搭載された「ドライバー異常時対応システム(EDSS=Emergency Driving Stop System)のデモンストレーション。
このシステム、一般向けの公開は「2018バステクフォーラム」が初めてです。
2016年に軽井沢で発生したスキーバス転落死傷事故など、大型バス運行中における重大事故が全国で相次いだことを教訓として、国土交通省が同年3月に定めたガイドラインに基づきバスメーカーが鋭意開発を進めているものです。
EDSSはドライバーの健康状態が突然悪化するなどし、正常な運転が続けられないような状態のときに、バスを緊急停車させるための装備です。
EDSSの作動にあたっては2通りの事態を想定しています。
1つは、体調の悪化等によって運転を続けられないと運転士自身が判断してボタンを押し緊急停車させるパターン。
そしてもう1つは、ドライバーの異常を察知した乗客のボタン操作によって緊急停車させるパターンです。
前者については運転席左側に、後者については、客席最前列の頭上(左右それぞれ1か所ずつ)に非常ブレーキボタンが設置されています。
EDSSの作動により緊急ブレーキが掛かる際には、後続車の追突等の事故を防ぐために、ハザードランプの点滅や、ホーンの断続的な吹鳴(すいめい)によって、周囲のドライバーや通行人等に注意を喚起するようになっています。
加えて、車内においても、天井の警報ランプが点滅するとともに、ピヨッピヨッというアラーム音が鳴る仕掛けが施されています。
なお、運転席側ボタンで操作をした場合には、ドライバーの自主的な判断に基づく緊急事態であるとみなし、即座にブレーキが作動を開始します。
一方、客席側ボタンでの操作については、乗客によるイタズラや誤操作が行われる可能性を考慮し、ドライバーが一定時間内(3.2秒以内)にキャンセル操作をしなかった場合に限りブレーキが作動を開始するようになっています。
このキャンセル操作については、運転席側ボタンの周りにガードリング状のキャンセルスイッチが配置されており、これをドライバーが回すことによりEDSSの本作動をキャンセルできるようになっています。
また、客席側のボタンは、イタズラや誤操作をされにくいよう、単なる押しボタンではなく、レバーを引き起こしてからボタンを押す2段階方式を採用しています。
デモ走行では、満員の参加者を乗せた日野セレガが、1周約1kmのコースを2周し、前述の2つのパターンによるEDSS作動デモに加え、ドライバーによるEDSSキャンセル操作の実演も行われました。
2019年施行の衝突被害軽減ブレーキ第2段階規制に適合する「ABA3」体験乗車も実施
あわせて、衝突被害軽減ブレーキ「ABA3=Active Brake Assist 3」を搭載した三菱ふそうエアロエースの乗車体験イベントも行われました。
バステクフォーラムにおけるABA3の実演は昨年のエアロクィーンに続くもので、2019年11月に施行される衝突被害軽減ブレーキ第2段階規制に適合させています。
ABA3は、フロントバンパーに内蔵したミリ波レーダーを使って車間距離を計測し、衝突の危険が迫ったと判断した場合に自動的にブレーキを作動させ、衝突時の被害を軽減するシステムです。
エアロエースは、先行車両に見立てたバルーンを目指し、ドライバーが一切ブレーキ操作をすることなく、時速40kmで突っ込んでいくと、バルーンの直前で自動的にブレーキが作動し停車しました。
今年のABA3体験イベントでは、運転席メーターパネルを撮影する小型カメラを設置し、車内モニターに映し出すことにより、詳細な作動状況が体感できるように配慮されていました。
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現役バスドライバー運転体験で大人気!中国製観光バス「オノエンスター」
バステクフォーラムが標榜する「体感型イベント」を最も具現化しているといえるのが「運転体験試乗」です。
これは、現役のバスドライバーをメインターゲットにしたイベントで、最新のバスを自ら運転することができます。
事前応募(大型免許必須)を経て当選通知を受け取った幸運なドライバーが、同乗する講師役の担当者からアドバイスを受けつつコースを2周し、加減速や振動等を実車で体感していました。
運転体験イベントで特に注目を集めていたのが、中国製の中型観光バス「オノエンスター」です。
このバスは、中国のバスメーカー「ヤーシン(Yaxing)」製で、輸入販売元のオノエンジニアリングが日本国内向けにオーダーした右ハンドル仕様。サイズは中型の観光バスになります。
昨年のバステクフォーラムにもオノエンスターが展示され注目を集めましたが、今年は昨年と同型のMT車の定置展示に加え、さらに試乗車を2台投入しました。
試乗車にはいずれもアリソン製のATが搭載されており、パワフルなクリーンディーゼルエンジンとの組み合わせによる滑らかな加速を自らの運転で体感していました。
この他、三菱ふそうエアロエースやエアロスター、ヒュンダイユニバース、日野メルファの試乗車も用意され、事前申込にて当選した参加者が、試乗を堪能していました。
「バステクフォーラム」で編集部が注目!魅力的な展示車両のご紹介
例年同様、今年のバステクフォーラムにおいても、運転体験車両に加え、定置展示車両も多数出展されていました。それらの中から、編集部が注目したバスをご紹介しましょう。
★三菱ふそうローザ4WD 路線仕様車
岐阜県高山市を本拠とする濃飛バスの路線バス車両です。
同社は、豪雪に見舞われる山間部にてバス事業を展開しており、4WD搭載の小型バスが必要不可欠です。
そのニーズに対応するべく、7m級の小型バスでは唯一の4WD車である三菱ふそうローザ4WDをベースに、ワンマン運行路線バスとしてのさまざまな機器を搭載するカスタマイズが施されています。
カスタマイズは、豊富な実績を持つエムビーエムサービスの手によるものです。
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★いすゞガーラHD-9
いすゞガーラHD-9(ハイデッカーナイン)は、日野セレガHIGH DECKER SHORT(ハイデッカ ショート)の兄弟車と位置づけられる、全長9mの短尺ボディが特徴の観光バス(中型バス)です。
昨年7月のマイナーチェンジにより、環境規制対応と安全装備のさらなる拡充を図っています。
運転席に設置されているダイヤル式ギアセレクターにより、7速AMTをイージーに操ることができます。
従来から搭載されている衝突被害軽減ブレーキシステムに、歩行者等への衝突回避支援機能も追加するなど、進化を続けています。
★日野リエッセII マルチユースマイクロバス
2017年1月発売の新型リエッセII(マイクロバス)をベースに、中京車体工業がさまざまな二次架装を施して、多目的に使えるように仕上げられています。
特に、客席シートは簡単に移動や取り外しができる、自由度の高いシステムとなっているのが特徴です。
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★近鉄バス・安全運転訓練車
一般の人がめったに見ることができない、近鉄バスの安全運転訓練車が展示されていました。
車内に入ると、理科の実験でおなじみのメスシリンダーを巨大化したような装置がひときわ目を引きます。これは燃料流量計で、運転に伴う燃料消費量が一目瞭然で分かるようになっています。
また、車体にかかるGを計測できる装置や運転士の視線移動を記録する装置等も設置されており、運転士の安全運転技能向上に資する内容となっています。
★ジャムジャムエクスプレス 2 階建て夜行高速バス・アストロメガ
アストロメガは、ベルギー・バンホール社のボディと、スウェーデン・スカニア社の410馬力エンジンや12速AMTを組み合わせた、2階建てバスです。
昨年、東京ヤサカ観光が貸切用観光バスとして導入し、話題を呼びました。今回は、高速バスでおなじみのジャムジャムエクスプレスで導入した車両の展示です。
全長約12m、全長約2.5m、全高約3.8mの威風堂々としたスタイリングで、圧倒的な存在感を放っていました。
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★日本交通「グリシェント」
日本交通が誇る超高級仕様バス「グリシェント(Gliscelto)」です。
ベース車は日野セレガ・スーパーハイデッカで、客席数14という非常に贅沢な仕様となっています。
広大な座席間隔を確保していることに加え、客室内にあえて荷物棚を設置しないことで、前後左右のみならず上部方向の空間も拡大しています。
高い質感のシートをはじめとする豪華かつ快適な装備に加え、最後尾には十分な広さの化粧室も設置されています。
過去にも豪華仕様バスが導入された例はたくさんありますが、ここまで豪華なつくりのバスは初めてじゃないでしょうか?バス旅行の概念をがらりと変えてしまいますね。
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★中国製観光バス「オノエンスター(MT車)」
昨年に続き今年のバステクフォーラムにも出展された中国製バス「オノエンスター」です。
体験運転用に投入された試乗車はAT仕様ですが、こちらはMT仕様です。
中国ヤーシン製の中型バスをオノエンジニアリングが日本国内向けにオーダーしたもので、カミンズ製クリーンディーゼルエンジンや車高調整機能、結露しにくい客室ペアガラス採用など、見どころの多いバスです。
★大阪バス・スーパーハイデッカー「NEW STAR」
大阪バスが「NEW STAR」の名称で展開している空港連絡バス用のスーパーハイデッカー車です。
車両は三菱ふそうエアロクィーンで、衝突被害軽減ブレーキ等の安全装備や、イージードライブを可能とするシフトパイロット等の装備により、ドライバーの負担軽減による安全快適な運行に努めています。
また、プラズマクラスター(空気清浄装置)を装備するなど、快適な車内空間の提供も図っています。
★西日本JRバス・高速夜行バス「ドリームルリエ号」
西日本JRバスの高速夜行便「ドリームルリエ号」の増備車です。
ゆとりある空間を確保したアドバンスクラスと、ほぼ個室に近いパーソナルな空間を提供するプレシャスクラスから構成され、高い人気を集めていることから、このほど増備車が投入されました。
全席装備のタブレット端末をはじめ、フリーWi-Fiやトイレ等を装備。各席とも座り心地のよい高級シートを装備しているのをはじめ、パーティションやカーテンで仕切ることで、パーソナルかつ安全快適な夜のバス旅を楽しめるように配慮されています。
バス火災対策の強い味方!エンジンルーム自動消火システムの実演
今年のバステクフォーラムでは、エンジンルーム自動消火システムの消火実演も行われました。
ひとたび出火すれば消し止めることが困難なのが自動車、とりわけ大型バスの火災です。
今回の実演では、消火剤の窒息効果および冷却効果で炎を鎮め、消火後も約1分ほど消火剤を噴出し続けることにより、温度を急速に下げて再出火を防ぐ様子が分かりました。
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★他にもバスの安全・快適運行を支える技術や装置がいっぱい!
バス車両の展示や乗車体験のみならず、バス運行を支えるさまざまな分野の企業等がブースを出展していました。ほんの一部ですが、写真でご紹介します。
以上、駆け足で「2018バステクフォーラム」の模様を紹介しました。
気が早いですが来年の開催にも期待しております。取材させていただいた関係者の皆様に感謝申し上げます。
「2018バステクフォーラム」
<開催日時>2018年5月25日(金)10時~16時30分
<開催場所>大阪北港 舞洲スポーツアイランド「空の広場」
主催:株式会社ぽると出版 バステク事務局
協賛:公益社団法人日本バス協会、近畿バス団体協議会
後援:国土交通省近畿運輸局
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