山の辺の道しるべ

千里の道も天理から、古代史オタク2泊3日奈良旅行「山の辺の道」編

修学旅行を除き、人生で3回目の奈良旅行。今回は師と仰ぐ歴史作家・関裕二さんが同行する旅です。

参加する方々も同志。古代史オタクとして心を通わせ、励まし合い2日目を迎えました。1日目の若草山登山もなかなかな歩きっぷりでしたが、実は2日目が最もやばいなと思っていた行程。

果たして最後まで行きつけるだろうか。山あり谷ありトラップありの2日目の旅をレポートします。

<2日目:山野辺の道編>

近鉄天理線/JR万葉まほろば線・天理駅「東口ココフン広場」出発==石上神宮==内山永久寺跡==夜都伎神社==衾田陵==長岳寺周辺で各自昼食==崇神天皇陵==檜原神社==大神神社==恵比寿神社==JR三輪駅着終了

現存する最古の古道といわれる「山の辺の道」を行く

天理駅「東口ココフン広場」
天理駅「東口ココフン広場」

山の辺の道は三輪山の麓から石上神宮を通り、奈良へと通じる道。「日本書紀」にもその名が残され、大和の古道の一つです。天理駅から桜井駅まで歩くと約16㎞と書かれてる・・・。

前回の旅で石上神宮を訪れた時は、天理駅から往復タクシー。電車で桜井駅まで移動して自転車で大神神社(おおみわじんじゃ)などを回りました。天理駅から歩くと約30分あるといわれたからです。

しかし、駅前でもらった山の辺の道リーフレットを見ると、天理から約2.1㎞・40分って書いてあるよ、関せんせーいっ!はい、黙って歩きます。

天理本通り商店街
天理本通り商店街

駅から山の辺の道まで続く天理本通りを進みます。こちらは天理教協会本部の門前町通りとしても有名で、東西約1㎞のアーケード商店街。

昭和レトロな雰囲気たっぷりで、180店舗近くがひしめき合っているそうです。

古代豪族である物部氏ゆかりの石上(いそのかみ)神宮、山の辺の道のはじまり

石上神宮
石上神宮

石上神宮に到着。お参りを済ませた後、いよいよ山裾に沿うように続く山の辺の道を桜井方面へ。大神神社を経由してJR三輪駅まで歩く予定です。

石上神宮は古代の豪族・物部氏の氏神。神庫(ほくら)に多くの武器が収められ、武器についての伝承が多いため「ヤマトの武器庫」と呼ばれることもあるのですが、本当はちょっと違うのでは、と関さん。

それは石上神宮がある場所、地理的な視点から読み解くとその役割が見えてくるそうです。

石上神宮・楼門(重要文化財)
石上神宮・楼門(重要文化財)

拝殿は国宝、楼門(ろうもん)は重要文化財です。そしてもう一つ、摂社・出雲建雄(いずもたけお)神社拝殿も国宝。

出雲健雄神社拝殿
出雲健雄神社拝殿

出雲健雄神社拝殿はもともと内山永久寺の鎮守、住吉社の拝殿でしたが1954年(大正3年)に移築されました。草薙剣(くさなぎのつるぎ)の荒魂(あらみたま)である 出雲建雄神(いずもたけおのかみ)をお祀りしています。

本殿や摂社など、各自思い思いにお参りし、いよいよ山の辺の道本番。まずは内山永久寺跡を目指します。

内山永久寺跡
内山永久寺跡

内山永久寺は、鳥羽天皇の勅願により、興福寺大乗院頼実が創建。神仏分離で廃寺になりました。現在は萱の御所跡(後醍醐天皇が吉野遷幸のときに立ち寄ったとされている)と本堂池だけが残されています。

ここに立ち寄ったのは、先ほどの物部氏が石上神宮をこの場所に建てた理由を説明するため(誰かに聞かれたらアブナイから?!)。

史実といわれていること、伝承が正しいとは限らない。発掘が進み考古学的な見地から「思ってたんと違う」歴史が現れています。

またさらに、地理的な視点から見直すとさらに違う歴史が見えてきます。歴史を知るにはフィールドワークが重要だと痛感しました。

<Information>

石上神宮
住所:奈良県天理市布留町384

萱葺き屋根の拝殿がユニークな「夜都伎(やつぎ)神社

夜都伎神社

夜都伎神社は、天理市乙木町の北側、宮山に鎮座しています。奈良の春日大社の4柱(武甕槌命、姫大神、経津主神、天児屋根命)を祀り、現在の拝殿は1906年(明治39年)に改築したものです。

神社の看板には『春日造檜皮葺、高欄、浜床、向拝彩色7種の華麗な同形四社殿が末神の琴平神社と並列して美観を呈する』とあります。写真ではよく見えませんが、拝殿の後側にチラ見えしています。

萱葺き屋根は2015年11月に葺き替え終ったものだそう。葺き替えるタイミングはだいたい15年前後で費用は数百万~数千万円かかるらしいです。他ではなかなか見ることができない拝殿ですので、ぜひ皆さんも立ち寄ってみては?

<Information>

夜都伎神社
住所:奈良県天理市乙木町765

環濠集落のある萱生の集落周辺、衾田(ふすまだ)陵へ参拝

衾田陵

衾田陵は、継体天皇の皇后で欽明天皇の母にあたる、手白香皇女(たしらかのひめみこ)の墓として宮内庁が管理しています。環濠集落のある萱生の集落周辺には古墳がたくさんありますが、衾田陵はその中でも最大規模を誇り、全長220mの前方後円墳です。

衾田陵の被葬者は誰?

手白香皇女は6世紀の人物。発掘調査によるとお墓は4世紀前半と推定されています。 本当の被葬者は誰なのか気になりますね。

<Information>

衾田陵
住所:奈良県天理市中山町

山の辺の道ツアー最大のピンチ!ランチ難民に

衾田陵の後は長岳寺近くにある「天理市トレイルセンター」で昼食、の、予定でしたが大誤算!観光客の数が多かったことと、私たちのグループも約30名という大所帯でした。

近くにある長岳寺の境内でにゅうめんが食べられる、ということだったのですがお休み。もう一つのお蕎麦屋さんもお休み。天理市トレイルセンター前にあるイギリス料理「ティーハウス クリノキ」も満席・・・。

天理市トレイルセンター前でおでんやカレーなどを販売していましたが、こちらも数に限りがあり、ということでみんなで分け合うようにいただきました。山の辺の道は人気の観光スポット。大人数で移動する場合は、お弁当の用意をおすすめします!

ちなみに天理市トレイルセンター内にある「洋食Katsui 山の辺の道」はハンバーグやエビフライ、黒毛和牛ロース網焼きなどが有名なレストラン。大阪・心斎橋の人気洋食店がここに移転してオープンさせています。次回はぜひ味わってみたい!

<Information>

天理市トレイルセンター
住所:奈良県天理市柳本町577-1

眺望が美しい「崇神天皇陵 」「景行天皇陵」

崇神天皇・景行天皇陵

大和朝廷の基礎を築いたといわれる崇神(すじん)天皇は初代神武天皇から数えて第10代目、実在の可能性が高い天皇といわれています。在位中、都に疫病が大流行。その疫病を鎮めるためには、祟っている出雲神・大物主神の子である大田田根子(おおたたねこ)に祀らせよというお告げを聞きます。

その後、大田田根子を大和に呼び寄せ、大物主神を三輪山をご神体とする大神神社に祀ったところ、たちまち疫病が終息したそうです。

なぜ出雲神が大和を呪うのか。崇神天皇とは本当はどんな人物なのか。気になる人はぜひ関裕二さんの本を読んでね!

崇神天皇陵
崇神天皇陵

崇神天皇陵は別名行燈山(あんどんやま)古墳とも呼ばれています。全長約242mある古墳は前方後円墳で、築造された年代は4世紀後半(古墳時代前期後半)の早い時期と推測。

龍王山麓から西へ伸びる丘陵を利用して造られており、周囲には濠が巡らされています。

そしてそこからほど近い場所には景行天皇陵(渋谷向山古墳)も。景行天皇陵は第12代目で、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の父です。こちらも全長300mあり、築造時の姿を比較的留めているといわれています。

景行天皇陵
景行天皇陵

そして今回の旅のルートには入っていませんが、すぐ近くには日本に4基ほどといわれる双方中円憤の「櫛山(くしやま)古墳」がありました。場所は崇神天皇陵のすぐ東側。

櫛山(くしやま)古墳
櫛山(くしやま)古墳

双方中円墳とは、丸い円丘の両側に台形(長方形)をつなぎ合わせた形状をしています。全国に約20万基あるといわれる古墳ですが、この形はわずか4基。古墳好きには大コーフンなスポットです。

<Information>

崇神天皇陵(行燈山古墳)
住所:奈良県奈良県天理市柳本町

景行天皇陵(渋谷向山古墳)
住所:奈良県天理市渋谷町

絶滅危惧種に指定されている「大和橘(やまとたちばな)」が自生

大和橘は最古の柑橘類

大和橘は日本に古くから自生してきた柑橘類。第11代垂仁(すいにん)天皇の勅命を受けた菓子の祖・田道間守(たじまもり)が苦労して、常世の国から持ち帰ったといわれています。

日本固有の自生種であり、記紀や万葉集にも登場する大和橘。「非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)=永遠に香っている果実」と詠われ、万葉人たちからこよなく愛されたという果実です。

最近では高貴な香りを活かし、アロマ用の精油づくりや橘胡椒をつくるプロジェクトの資金を募る、クラウドファンディングが実施されていました。

奈良の美しい里山に2000年の時を超えてたわわに実をつける橘の実。歩き疲れた体に元気をくれました。

ジャンボレモン
規格外のデカさ・ジャンボレモン

山の辺の道沿いではみかんやレモン、柿など果物の無人販売がいっぱい。

みかんの無人販売

ひたすら歩きづづける旅も終盤戦。疲れてうなだれて歩く私たちに関先生がみかんの差し入れをくれました。とてもみずみずしくて味の濃い、おいしいみかんでした。

あともう一息、頑張るぞー!と思ったら、神の祝福!?

大和三山である耳成山(みみなしやま)、畝傍山(うねびやま)に美しい光が差し込んでいます

大和三山である耳成山(みみなしやま)、畝傍山(うねびやま)に美しい光が差し込んでいます。頑張ってる私たちへのご褒美みたいでした。

こんな神社、初めて見た「 檜原(ひばら)神社 」

檜原神社
大神神社と同じ形態の檜原神社鳥居

神々からの祝福を受け、無事檜原神社に到着しました。檜原神社は大神神社の摂社です。

2つの柱の間に大きな注連縄を渡した鳥居の形は原始的なスタイル。三輪山前の拝殿にある「三ツ鳥居」があるところも、大神神社と共通しています。

檜原神社の拝殿
三つ鳥居の拝殿

大神神社の場合は見ることができない(禁足地)ため、こちらでみることができるのは大変貴重な機会なのではないでしょうか。

御祭神は天照大神で、皇居に祀っていた神霊を崇神天皇が豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)に託し、初めて外で祀った「倭笠縫邑(やまとかさぬいむら)」の地と考えられています。天照大神は伊勢神宮へ移されたのちもここで祀っていることから「元伊勢」と呼んでいるそうです。

檜原神社正面の鳥居の向こうには、ラクダのこぶのように見える二上山があります。春分・秋分の頃に二上山に沈む夕陽がとても美しく見えることでも有名。

大神神社には皆さん参拝されると思いますが、こちらの檜原神社にもぜひ足を延ばしてほしいと思いました。

<Information>

檜原神社
住所:奈良県桜井市三輪1422

「大神神社(おおみわじんじゃ)」のハイテクおみくじをひいたら大吉だった!

山の辺の道・旅のゴールは大神神社

ついに、いよいよ大神神社に到着しました。長い長い旅の終わりには、お賽銭箱の中身を回収する神職さんたちに遭遇w

大神神社の鳥居
大神神社の鳥居

そして大神神社ではタブレットでおみくじが引けるのを発見!実は私、年初めから「末吉→小吉→末吉」を繰り返してきました。

途中で行き倒れて『死して屍拾うものなし』に、危うくなりかけながらもようやくたどり着いた大神神社。どれだけ厄が払えたのか挑戦だ!

おみくじが大吉

やったーーー!大吉だ。しかも老後は「信頼を身に集めて幸せなり」だって。よかった、よかった。

疲れた体に染みわたるご神託でした。

<Information>

大神神社
住所:奈良県桜井市三輪1422

まだまだ旅は終わりじゃない!日本初市祭「三輪恵比須神社」へ

三輪恵比須神社

大神神社参拝の後、三輪恵比須神社に立ち寄りました。こちらは、日本最初の市である”海石榴(つば)市”の守護神を祀り、古くから信仰を集めてきた神社です。

海石榴市は山人と里人が物々交換をしたことが始まりとされ、古代における経済活動の中心地とされてきました。また“市”の語源は“斎ち(いち)”であり、「斎祀ること」であることから、商取引に先立ち、必ずお祭りが執り行われてきたそうです。

古代から海石榴市を行ってきた場所が地殻変動の影響を受け、そこで開くのが困難になったため、現在の三輪市へ移されたとのこと。その際、そのご神体も現在の場所に移し、祀っているのがこちらの神社ということでした。

主祭神は八重事代主命(ヤエコトシロヌシノミコト)、大神神社で祀られている大物主命の子どもにあたります。恵比寿様は事代主命であり、大黒様は大国主命。親子関係にある、ともいわれています。

こちらの大黒様・恵比寿様は比較的新しいめなデザインのよう。像を横から、もしくは後ろから見るとあるものが見えると関さんはいいます。豊穣の神さまですからね。

何が見えるかは皆さんの想像力と観察眼にお任せします。

珍しい木彫りの狛犬
珍しい木彫りの狛犬

実はこちらの三輪恵比須神社には大変貴重な木彫りの狛犬さんがいらっしゃいます。通常の狛犬は石づくりですよね。

時を重ね、傷みが激しくなったことから2020年3月から再生プロジェクトをスタート。関先生もご寄進をなさったということで、今回お邪魔した際は特別に再生された狛犬を見せていただくことができました。ありがとうございます!

恵比須神社で恵比須顔
恵比須神社でエビス顔

三輪恵比須神社では2月5日~6日に三輪の初えびすの神事を行っています。2021年はコロナ禍ということもあり、主なにぎわいは中止されてしまったようです。2022年はいつもの賑やかさが戻ることをお祈りしています。

この日の歩いた歩数は30,002歩。距離にして約17.6㎞でした。乾杯のビールとホテルの温泉に癒され2日目を終了。

明日でいよいよ最終日で、寂しい気持ちでいっぱいに。明日香村を歩きます。

<Information>

三輪恵比須神社
住所:奈良県桜井市三輪375番地

■取材協力
新潮講座 神楽坂教室
関裕二さんの公式ブログはこちら≫

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貸切バスで山の辺の道観光を楽しむ場合の注意点

長岳寺
長岳寺

山の辺の道はご紹介したとおり、かなり長い道を走破することになります。それでも美しくも懐かしい日本の原風景に出会える素敵な道でした。

もし、健脚でない・自信がないという場合は、要所要所で歩き、貸切バスで回るのがおすすめです。山の辺の道周辺の駐車場情報についてお伝えします。

石上神宮のバス駐車場

山の辺の道の始まりとしてまずは石上神宮にお参り。バス駐車場は第3駐車場(西駐車場・無料)にバス10台、停められます。神宮に最も近い第1駐車場(社務所前駐車場)、第2駐車場は乗用車もしくはマイクロバスまでとなります。

天理市杣之内(そまのうち)駐車場

夜都伎神社から徒歩約7分のところにある観光バス駐車場です。石上神宮から内山永久寺跡、夜都伎神社まで歩く場合はこちらにバスを回送してもらい、乗車するのが便利。駐車料金は無料です。

天理市トレイルセンター駐車場

黒塚古墳や崇神天皇陵(それぞれ徒歩約9分)から近いのがこちらの駐車場。衾田陵からは徒歩約15分です。駐車場料金は無料。

黒塚古墳には展示館があり、竪穴式石室を実物大で再現し、三角縁神獣鏡33面、画文帯神獣鏡1面、鉄製刀剣類のレプリカも展示しています。

大神神社の駐車場

大鳥居北駐車場、一の鳥居駐車場が無料で利用可能。大神神社参道の整備工事に伴い、2023年(令和5年)3月までの予定で、二の鳥居付近での一般車両、大型バス、マイクロバス(路線バスを除く)の一時停止および乗降が出来ないので要注意です。

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