薬師寺と唐招提寺で仏像を見る・古代史オタク旅行「西ノ京」編

薬師寺と唐招提寺で仏像を見る・古代史オタク旅行「西ノ京」編

1日目からかなり盛りだくさんな内容の大和路仏像巡り。午前中は奈良市内を散策しながら仏像巡りを楽しみました。

午後からは西ノ京へ移動。ここから薬師寺と唐招提寺を訪れました。

大和リゾート株式会社企画・催行「関裕二先生と行く大和路仏像巡り編」

<1日目午前:奈良市内編>

近鉄奈良駅・行基像前出発==白毫寺==二月堂==昼食(春日野)==東大寺ミュージアム
奈良市内編はこちら≫

<1日目午後:西ノ京編>

近鉄奈良駅から西ノ京駅へ移動(午後のみ参加者と合流)==薬師寺==唐招提寺==近鉄奈良駅着終了

<2日目:南山城(京都)バスツアー編>

近鉄奈良駅出発(貸切バスで移動)==浄瑠璃寺==笠置寺==昼食(松本亭)==恭仁京跡==大御堂観音寺==近鉄奈良駅着終了
南山城(京都)バスツアー編はこちら≫

<3日目:法隆寺編>

JR法隆寺駅集合・出発==藤ノ木古墳==法隆寺==昼食(布穀薗)==法隆寺・夢殿・宝物殿など==中宮寺==法起寺==JR法隆寺駅着終了
法隆寺編はこちら≫

<4日目:室生寺からの熱田神宮編>

JR京終駅出発==龍穴神社==室生寺==昼食==名古屋・熱田神宮==新幹線で帰京・終了
室生寺・熱田神宮番外編はこちら≫

薬師寺参詣前に立ち寄るのがおすすめ!「休ヶ岡八幡宮」

休ヶ岡八幡宮
休ヶ岡八幡宮

近鉄奈良駅から西ノ京駅へ。午後から参加する人たちと合流し、まずは薬師寺に向かいます。と、その前に薬師寺の南側に位置する「休ヶ岡八幡宮」に立ち寄りました。

こちらは、薬師寺を守護する神社。薬師寺参詣の際は、まずは休ヶ岡八幡宮を参拝してからお寺に行くのがおすすめだそうです。

寛平年間に大分県宇佐八幡宮から現在の場所へと勧請されました。“休ヶ岡”という地名は、大安寺の元石清水八幡宮に勧進された八幡大神がここで休息されたことに由来するとか。

現在の社殿は、1603年に豊臣秀頼の寄進により造立。中世に始まった宮座(専任の神主がおらず、神社の氏子集団が中心となり神事や祭祀を行うこと)が受け継がれているのは大変貴重なことなのだそうです。

休ヶ岡八幡宮のご祭神は僧形八幡神を中心に向かって右手に神功皇后、左手に仲津姫命を配した三神一具の像。木造の神像としては最古ともいわれているとか。

現在は奈良国立博物館に寄託されているので、拝見したい方はぜひそちらにも足をのばしてみてはいかがでしょうか。

そして春に訪れるなら桜が美しい休ヶ岡八幡宮の参道。

休ヶ岡八幡宮前にある桜が美しい

2023年の春はあまりにも桜の開花は早く、ほとんどは散ってしまっていましたが、薬師寺南門と休ヶ岡八幡宮の間に見事に咲き誇る桜が1本だけありました。

西ノ京駅から薬師寺に向かう際、休ヶ岡八幡宮に立ち寄るひとはあまりいないようです(私も今回が初めて)。

神社の参道は近鉄電車の線路を横切る形で住宅街まで伸びており、この参道沿いは「桜のトンネル」として地元では有名なのだそう。春に参拝されるときは、ぜひ立ち寄って欲しいスポットとなっています。

Information

休ヶ岡八幡宮
住所:奈良県奈良市西ノ京町457
電話:0742-33-6001
バス駐車場:薬師寺の駐車場が利用できます

約4年ぶりのご無沙汰でした!世界遺産・薬師寺

西ノ京にある「薬師寺」へ

前回、薬師寺を訪れたのは2019年5月。金堂、西塔、東塔、食堂、東院堂、玄奘三蔵院伽藍と目いっぱい拝観しました。今回は仏像がテーマということで、まずは国宝・東院堂へ向かいます。

日本最古の禅堂「東院堂」で聖観音菩薩像(しょうかんぜのんぼさつぞう)を拝観

東院堂で聖観音菩薩を拝観

国宝である「東院堂」はお寺の縁起によると、養老年間に吉備内親王(草壁皇子と元明天皇の次女、長屋王の妃)が元明天皇のために発願建立されたもの。1285年に再建され、さらに1733年に西向きに替えられています。

こちらのご本尊は聖観音菩薩(白鳳時代・国宝)です。薬師寺ホームページを拝見すると、観音菩薩には千手観世音菩薩や十一面観世音菩薩などがおられますが、変身しない本当のお姿ということで「聖(しょう)観音菩薩」とおっしゃるそうです。

とても繊細なつくりで気品のあるたたずまい。厳しさの中にどこか憂いのある悲し気なお顔立ちに感じました。こちらの御堂では鎌倉時代に造られたという四天王立像(重要文化財)も拝観できます。

「金堂」で白鳳時代作の薬師三尊像とご対面

金堂と東塔
写真向かって左が「金堂」、右が「東塔」(画像提供:薬師寺)

薬師寺は680年(天武天皇6年)に、持統天皇が天武天皇の病気平癒を願い発願したお寺。710年、元明天皇の命により藤原京から平城京に遷都した際、薬師寺も平城京右京六條二坊である現在の地へと遷りました。

その後、火災や地震、兵火などで建物が失われ、創建時から現存するのは東塔(国宝)のみとなっています。

「金堂」は1968年から始まった「百万巻お写経勧進による薬師寺金堂復興」プロジェクトにより、1976年に再建。上層にはお写経が納められた納経蔵があります。

こちらには創建当初から祀られている薬師寺のご本尊「薬師三尊像(白鳳時代、国宝)」を拝観。中央に薬師如来、向かって右に日光菩薩、左に月光菩薩が安置されてます。

1528年の享禄の兵火で薬師三尊の光背が焼失してしまいましたが、お像は当初の造形を残しているとのこと。金銅彫刻ながら優美で繊細な表現は見る人々の心を魅了します。

中でも薬師如来台座は、ギリシャ由来の葡萄唐草紋様、ペルシャの蓮華紋様が描かれており、どこかエキゾチックな雰囲気。框の四方には四神(青龍・朱雀・白虎・玄武)が表現され、高松塚古墳やキトラ古墳の装飾壁画とも類似点が見られるそうですよ。

「大講堂」で弥勒三尊像と仏足石を見る

薬師寺の大講堂へ
大講堂

「大講堂」は1852年に再興されましたが、創建当時に比べると小さな規模だったそうです。その後、2003年に創建当初と同じぐらいの規模に再興されています。

こちらのご本尊は弥勒如来を中央に、向かって右に法苑林(ほうおんりん)菩薩、左に大妙相(だいみょうそう)菩薩を従えた三尊形式です。

そして前回訪れた時、拝見していなかった「仏足石(国宝)」も見ることができました。仏足はお釈迦様の足跡を掘った石で、753年(天平勝宝5年)につくられたもの。

古代の仏足跡は少ないようで、こちらの仏足石は現存する最古のものだそうです。仏足石に従うように釈迦十大弟子(文化勲章受章者である中村晋也さん作)が安置されています。

Information

薬師寺
拝観時間:8時30分~17時(受付は16時30分まで)
通常拝観券:大人1,100円、中高生700円、小学生300円
[拝観場所:白鳳伽藍+玄奘三蔵院伽藍]
共通拝観券:大人1,600円、中高生1,200円、小学生300円
[拝観場所:白鳳伽藍+玄奘三蔵院伽藍+東塔・西塔]
※2024年1月15日まで玄奘三蔵院伽藍・東塔・西塔が特別公開中
※25名以上の団体での割引あり
★料金について詳しくは公式ホームページを参照ください。
住所:奈良県奈良市西ノ京町457
電話:0742-33-6001
バス駐車場:大型・中型バス1回2,200円、マイクロバス1回2,000円

古都・奈良ではのたたずまいを楽しめる唐招提寺

唐招提寺

続いて訪れたのは唐招提寺(とうしょうだいじ)。こちらも世界遺産となっています。

唐招提寺は759年、天武天皇の息子である新井田部親王(にいたべしんのう)の住まいを譲り受け、鑑真和上(唐の高僧)が創建。戒律(僧が守るべき道徳規範)を学び、身に付けるための道場としてスタートしました。

井上靖さんの小説「天平の甍(いらか)」を読んでこちらを初めて訪れたときは感無量。その静かで凛としたたたずまいに深い感銘を受けたのを覚えています。

まず最初に鑑真和上の御廟である「開山御廟」をおたずねします。

大地を覆う苔が見事!「開山御廟」

開山御廟
開山御廟

「開山御廟」は境内の北東、奥まった場所に位置しています。門をくぐると整然と並ぶ杉の木立、そしてその根元の地面を覆いつくすように美しい苔がびっしり!

写真では今一つその迫力が伝わってきませんが圧巻の景色でした。その木立を真っすぐに進むと八角形の壁に囲まれた鑑真和上のお墓が現れます。

小高い方墳の形をした土壇の上に高さ約12.5mの宝篋印塔(ほうきょういんとう、仏塔の一種)が建立されています。開山御廟前には鑑真和上の故郷である中国・揚州から贈られた瓊花(けいか)が植えられ、初夏(4月中旬~5月頃)になると可憐な白い花を咲かせるそうです。

白くて可憐な花を咲かせる瓊花
白くて可憐な花を咲かせる瓊花

鑑真和上は763年5月6日に76歳で亡くなりました。

非公開中で残念!「御影堂」へ

御影堂
御影堂

続いて境内の北側にある「御影堂(重要文化財)」へ。

こちらの建物、元は興福寺の別当坊だった一乗院宸殿の遺構で、明治以降に県庁や奈良地方裁判所の庁舎として使われていたものを1964年に唐招提寺へ移築復元したものだそうです。

鑑真和上坐像(国宝)、東山魁夷画伯作の鑑真和上坐像厨子扉絵、ふすま絵、障壁画がこちらに収められています。しかし、残念なことに非公開。

2023年6月3日(土)~7日(水)に特別公開が行われ、鑑真和上坐像特別開扉とのこと。鑑真和上坐像は奈良時代の作で、脱活乾漆(麻布を漆で貼り合わせ整形を施す製法)で日本最古の肖像彫刻といわれています。

僧となるための授戒が行われる「戒壇(かいだん)堂」

戒壇堂
戒壇堂

金堂の西側にある「戒壇堂」。こちらは、正式な僧尼となるための授戒が行われる場所です。

唐招提寺創建時に築かれたそうですが中世に廃され、その後再興されたものの火災により建物は失われてしまったそうです。現在は鎌倉時代に造られた3段の石壇のみが残り、その上にインド・サンチーの古塔を模した宝塔が1978年に築かれています。

戒壇はお釈迦様が在世時代にインドの祇園精舎に築かれたのが起源といわれており、常に結界が整った場所。

ちなみに東大寺にある戒壇では、聖武天皇・光明皇后など約440名が鑑真和上より戒を授けられたといわれています。

さあ皆の者、心の赴くままに仏像と対峙するがよろし

金堂、講堂、鼓楼など

戒壇堂の後は時間まで自由行動。各自心の赴くままに唐招提寺境内をウロウロすることに。

まずは「金堂(国宝)」で本尊である廬舎那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)とご対面。高さ3mを超える大きな廬舎那仏像は、脱活乾漆造で天平文化後期の最高傑作ともいわれているもの。

光背に千体の仏様があったといわれていますが、現在は864体ほどだそうです。どっしりとした重厚感、切れ長の目、おおらかな唇など優美で迫力のあるお姿です。

その廬舎那仏に向かって右に薬師如来立像、左に千手観音立像が安置されています。薬師如来像は平安時代、千手観音立像は奈良時代の完成とのこと。

千手観音立像も実際は1,000本手があったといわれていますが、現在は大脇手42本、小脇手911本、合わせて953本の腕が残されています。

昨年山形に旅行した際、酒田市にある「土門拳記念館」でこの千手観音立像の写真を見た時はあまりの迫力に息をのみました。

天平の技と平成のテクノロジーで往年の姿を再現した「金堂」

金堂の屋根と鴟尾にも注目
平成の大修理で往年の姿を蘇らせた「金堂」

「金堂」は奈良時代8世紀後半に建立された寄棟造り。その後、江戸時代と明治時代に大規模な修理を経ています。

大きな屋根を支える宮大工の優れた技術
独特の優美な反りが特徴の屋根

また、2009年に終了した「平成の大修理」では屋根瓦や鴟尾の取り換え、耐震補強などを実施しました。この時、金堂西側の鴟尾は形状から奈良時代後期の製作と推定され、東側のものには鎌倉時代の銘があったといいます。

いずれも傷みが激しいため2009年の金堂修理の際に取り外され、唐招提寺内で保管。現在は新調した鴟尾が使われているそうです。

ツアー2日目は貸切バスで京都へ、南山城を訪ねます。

Information

唐招提寺
拝観時間:8時30分~17時(受付は16時30分まで)
拝観料:大学生以上1,000円、高校生400円、中学生400円、小学生200円
※団体での割引あり
住所:奈良県奈良市五条町13-46
電話:0742-33-7900
バス駐車場:タイムズ唐招提寺16台駐車可能、120分2,420円、以降1時間ごとに550円

■取材協力
D’s Trip 大和リゾート株式会社
法相宗大本山 薬師寺
ゆだぽんさん

関 裕二(せき ゆうじ)さんプロフィール

1959(昭和34)年、千葉県柏市生ま れ。歴史作家・武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。
仏教美術に魅せられ奈良に通いつめ、独学で日本古代史を研究。
『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など著書多数。

NHKカルチャー青山教室目黒学園カルチャースクールで古代史講座が絶賛開講中。興味のある方はぜひ!

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この記事を書いた人
ちくわ

旅行メディア編集長兼ライター、総合旅行業務取扱管理者、旅行会社勤務経験あり、目黒区ボランティアガイド見習い中。プライベートでも古代史オタクとして年に数回フィールドワークに出かける旅好き。時々バス愛がさく裂!?

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