古代史オタク旅行3日目は歩くよ、歩く「藤ノ木古墳・法隆寺・中宮寺・法起寺」編

古代史オタク旅行3日目は歩くよ、歩く「藤ノ木古墳・法隆寺・中宮寺・法起寺」編

大和路仏像巡りいよいよ最終日。今回のツアーでは法隆寺の夢殿秘仏・救世観音菩薩立像、春の御開帳に合わせての訪問となっています。

法隆寺は世界最古の木造建築物として世界遺産に認定。修学旅行の行き先としてあまりにも有名ですよね。

前回の御開帳で救世観音菩薩立像と対面した時、とても怖かったのでちょっとビクビクしながらの訪問です。

大和リゾート株式会社企画・催行「関裕二先生と行く大和路仏像巡り編」

<1日目午前:奈良市内編>

近鉄奈良駅・行基像前出発==白毫寺==二月堂==昼食(春日野)==東大寺ミュージアム
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<1日目午後:西ノ京編>

近鉄奈良駅から西ノ京駅へ移動(午後のみ参加者と合流)==薬師寺==唐招提寺==近鉄奈良駅着終了
西の京編はこちら≫

<2日目:南山城(京都)バスツアー編>

近鉄奈良駅出発(貸切バスで移動)==浄瑠璃寺==笠置寺==昼食(松本亭)==山城国分寺・恭仁京跡==大御堂観音寺==近鉄奈良駅着終了
南山城(京都)バスツアー編はこちら≫

<3日目:法隆寺編>

JR法隆寺駅集合・出発==藤ノ木古墳==法隆寺==昼食(布穀薗)==法隆寺・夢殿・宝物殿など==中宮寺==法起寺==JR法隆寺駅着終了

<4日目:室生寺からの熱田神宮編>

JR京終駅出発==龍穴神社==室生寺==昼食==名古屋・熱田神宮==新幹線で帰京・終了
室生寺・熱田神宮番外編はこちら≫

未盗掘で見つかった円墳、斑鳩町にある「藤ノ木古墳」へ

斑鳩文化財センター
斑鳩文化財センター

藤ノ木古墳は法隆寺の西側で発見された円墳で6世紀後半の築造といわれています。1985年(昭和60年)に未盗掘の状態で発見され、両袖式の横穴式石室には、朱塗りの家型石棺、土器類、精巧で豪華な金銅製馬具(重要文化財)などが出土して大きな注目を集めました。

朱塗りの家型石棺の模型
朱塗りの家型石棺の模型

すぐ近くにある「斑鳩文化財センター」では、藤ノ木古墳のガイダンスと出土品を展示。発掘された朱塗りの家型石棺のレプリカなどもここで見ることができます。

朱塗りの家型石棺内の被葬者について

古墳の築造時期から、被葬者に推定されているのは崇峻天皇、穴穂部(あなほべ)皇子・宅部(やかべ)皇子、紀(き)氏、平群(へぐり)氏、膳(かしわで)氏などなど。

いずれにせよ、聖徳太子の身近な人であったといわれています。

金銅製鞍金具(前輪)
金銅製鞍金具(前輪)

金銅製鞍金具(前輪)は木製の鞍の前面に取り付けられた飾り金具。六角形を並べた亀甲繋文(きっこうつなぎもん)により区画され、交点には紺色のガラス玉がはめ込まれています。

鳳凰や龍、獅子、パルメットなどの文様が透かし彫りされているなど精密なつくり。

金銅製鞍金具(後輪)
金銅製鞍金具(後輪)

馬具は3セット分が出土しているそうで、特に鞍金具は当時の東アジアにおいても類をみない装飾と精巧につくられた一級品と評価されています。「斑鳩文化センター」で発掘状況や副葬品の説明を受けた後はいよいよ、藤ノ木古墳へ。

藤ノ木古墳の中を見学

横穴式石室の中の様子をのぞき見できるように、入口に透明な扉が付いていました。何とか写真を撮りたかったのですが、反射して撮影叶わず…。

実は藤ノ木古墳、1995年(平成7年)に被葬者の骨壺が盗まれるという事件(犯人は中学生3人組だった・・・)が起きています。この時、石室の入口に付けられていた扉の鍵は乱暴に引きちぎられ、容易に進入を許してしまったことから、現在は厳重に管理されています。

Information

斑鳩文化財センター/藤ノ木古墳
開門時間:9時~17時(入館は16時30分まで)、水曜・年末年始休み
入館料:無料
※特別展等有料の場合もあり
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺西1-11-14
電話:0745-70-1200

法隆寺パート1は金堂や五重塔、そして今回初めて西円堂へお参り

法隆寺には過去3回訪れ、2回目は救世観音の御開帳に合わせて訪れているので今回は4回目ということになります。事前に取材のお伺いを立てたところNGというお返事をいただいたので、写真はありません。

実は昨年の12月にちらりと訪問しているのですが、心なしか以前訪れた時よりもあまり心に響かなかったのが気になっていました。

午前中は金堂や五重塔、中門・回廊・経蔵、大講堂などをぐるりと一回り。そして初めての訪問となる西円堂へ。

西円堂は西院伽藍北西の小高い場所にあります。こちらのお堂の創建は、718年(養老2年)に光明皇后の母、橘夫人(県犬養橘美千代)の発願によって、行基菩薩が建立したという伝承があります。

現在の建物は1250年(建長2年)に再建。こちらの御本尊は「峯の薬師」といわれる薬師如来(奈良時代・国宝)です。粘土で原型をつくり、表面に麻布を貼り固めて像内の粘土を除去。麻布の表面に漆木屎を盛り付けて塑形する“脱活乾漆造り”となっています。

薬師如来像を取り囲むように十二神将像が、また東面には千手観音像、北面には不動明王像が安置されていました。

そしてお堂の北西には、お釈迦様のお弟子さんである「びんずるさま」が!

「びんずるさま」は病気を治す力があるとされ、治したい部位を撫でるとよいといわれています。そういえば、2023年4月に善光寺の「びんずるさま」が盗まれるという事件がありましたね・・・。

西円堂からの眺めがとても素晴らしく、来てよかったとしみじみ思いました!

ランチは「布穀薗」で、午後の救世観音ご対面に備えます

和カフェ「布穀薗」
和カフェ「布穀薗」

広い広い法隆寺。お昼をいったん挟んでからまた拝観に向かいます。

お昼ご飯はすぐ近くにある和カフェ「布穀薗(ふこくえん)」で頂きました。「布穀薗」は幕末・維新期の尊攘運動家、北畠治房(きたばたけはるふさ)が晩年暮らした屋敷を活用した趣のある建物が特徴です。

カフェとして利用している場所は長屋門にあたるそうです。

「布穀薗」のランチメニュー

今回私たちがいただいたのは「斑鳩名物 竜田揚げランチ」です。“全粒粉入りの素麺ベルブラン”がついています。

カラりと揚がった竜田揚げはボリューム満点。雑穀米のごはん、大和野菜の小鉢、斑鳩の豆腐小鉢、サラダ、お漬物が付いてきました。

全粒粉入り素麺ベルブラン
全粒粉入り素麺ベルブラン(吉野産の原木しいたけ入り)

“全粒粉入りの素麺ベルブラン”は、お店でも販売しており、全粒粉・国産小麦100%で無添加、ノンオイルの手延べ素麺です。麺つゆでいただいてももちろん、洋風やエスニックなどさまざまなアレンジでいただいてもおいしいそうです。

凄く気になったのですが、糖質制限中で普段はそうめんなどを食べられないので我慢、我慢。旅行中はいっぱい歩くので良しとしました。

美しい布穀薗のお庭

カフェの外にもテラス席があり、美しく手入れされたお庭が素敵です。こちらは結婚式場としても利用されていたそうですよ。

Information

布穀薗
営業時間:10時~16時(L.O15時45分)、水曜休み(祝日営業)
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺2-2-35
電話:0745-44-8787

法隆寺パート2では、大宝蔵院と百済観音堂、そして夢殿で救世観音にご対面

食事を終えた後、再び法隆寺へ。午後は東院伽藍に向かいます。途中で最初に法隆寺があったとされる若草伽藍の近くを通りました。

2020年4月に放映されたNHKの人気番組「ブラタモリ#161」で法隆寺を訪れていた際、非公開エリアである若草伽藍を紹介していましたねー。

まずは大宝蔵院で重要な展示仏、悪夢を吉夢に替えてくれるといわれる「夢違観音」や教科書でおなじみの「玉虫の厨子」、「百済観音像」などをさささーとみていきます。

そして、光明皇后の母である橘夫人の念持仏と厨子(白鳳時代・国宝)の場所へ。こちら、数年前に見た時と展示位置が変わっていると昨年末気づきました。気のせいかなと思ったのですが、関先生にたずねたところちょっと変わったと思う、とおっしゃっていたので記憶違いではなさそうです。

前よりは阿弥陀三尊像が見やすくなっているとは思うものの、ちょっと暗いのでわかりにくいのが残念です。

そしてハイライトの夢殿へ。いよいよ救世観音に再会です。

しかし、不思議なことに初めて見た時に比べ、お顔立ちが柔和な印象が・・・。最初見た時は本当に怖かったのですが、今回はあまり感じませんでした。

しかし、初めて見た方からめちゃめちゃ怖い・・・という感想がありました。やっぱり怖いのか・・・。

皆さんはどのように感じられるでしょうか。ぜひ、御開帳のタイミングに合わせて訪問し、土門拳さんが“生きている”と称したご尊顔を拝観されてはいかがでしょうか。

Information

法隆寺
拝観時間:8時~17時(11月上旬~2月下旬までは16時30分まで)
拝観料:一般1,500円、小学生750円
※30名以上で団体割引あり
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1の1
電話:0745-75‐2555

法隆寺(僧寺)と尼寺の関係にあったといわれる中宮寺へ。

中宮寺
中宮寺

続いて中宮寺へ向かいます。

中宮寺は聖徳太子とその母・穴穂部間人皇后ゆかりのお寺と伝わり、1300年以上の歴史があります。飛鳥時代は現在の場所よりも約500m東方面へ創建されていたとのこと。

中宮寺の歴史

発掘調査の結果、四天王寺式伽藍配置だったこと、若草伽藍と同箔の瓦も出土したことから、法隆寺とは僧寺・尼寺の関係にあったと考えられています。

中宮寺の御本尊・菩薩半跏像

こちらのお寺の本尊である国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音)は,飛鳥時代の最高傑作の一つといわれ、アルカイックスマイルをたたえた表情が有名。エジプトのスフィンクスとモナ・リザと並び、「世界の三つの微笑像」といわれているそうです。

クスノキの部材をはぎ合わせた寄木造りで、黒く光る細くてしなやかな体はなんともたおやかで上品な印象を受けます。

中宮寺の金堂から庭を観る

また、中宮寺に伝わる天寿国曼荼羅繡帳(複製、実物は奈良国立博物館にあります)は、662年に聖徳太子の后である橘太郎女(たちばなのおおいらつめ)が、太子が往生した世界を繍帳にすることを推古天皇に願い出て、采女(うねめ)たちに刺繍させたもの。日本最古の刺繍です。

本堂前の池を囲むように黄金色の八重一重の山吹が咲き、四季折々の花々が彩る美しい境内。尼寺らしい優しくたおやかな雰囲気を感じるお寺でした。

Information

中宮寺
拝観時間:10月~3月末 9時~16時/3月末~9月 9月~16時30分(受付は終了時間15分前まで)
拝観料:大人600円、小学生300円
※30名以上で団体割引あり
住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺北1‐1‐2
電話:0745-75‐2106

旅の最後は法起寺(ほっきじ)へ、国宝の三重塔を見に行きます

法起寺に向かう途中に蓮華の花が美しい

旅の最後は法隆寺地域の仏教建造物として世界遺産に登録されている法起寺(ほっきじ)へ。こちらも法隆寺の管轄ゆえ、写真撮影はかないませんでした。

なので、道すがら美しく咲いていたレンゲの花をイメージ画像として置いておきますね。明日香村の蘇我入鹿首塚をかつて訪れた時、レンゲ畑が一面に広がっていた美しい光景が蘇ってきて胸が熱くなりました。

素朴だけど心に響く里山の風景です。

法起寺は聖徳太子ゆかりの岡本宮をその子どもである山背大兄王(やましろのおおえのおう)が寺にしたと伝わります。七堂伽藍の大寺院で、金堂と塔の位置が法隆寺と逆で“法起寺式”と呼ばれる配置。

こちらの三重塔は706年(慶雲3年)に建立されたものと伝わり、現存する最古のものとして知られています。一重の石壇上に立つ、三間四方三層、高さ23.9mの塔婆で、1950年(昭和47年)に解体修理を行い、創建当時と同じ形に復元されています。

お寺の御本尊は木造十一面観音菩薩立像。現在は収蔵庫の方へ安置されています。平安時代の作で重要文化財です。

Information

法起寺
拝観時間:8時30分~17時(11月上旬~2月下旬は16時30分まで)
拝観料:大人300円、小学生200円
※30名以上の団体で割引あり
住所:奈良県生駒郡斑鳩町岡本1873
電話:0745‐75‐5559

旅の終わりはいつも寂しい・・・また奈良に戻ってくることを誓って

東大寺・二月堂からの景色
東大寺・二月堂からの景色

奈良には何度も足を運び、古代史のフィールドワークを楽しんできました。今回もまたいつもとは違う奈良の魅力をたっぷりと楽しむことができて嬉しかったです。

奈良というと大仏や鹿しか覚えてないという方が多いことでしょう。奈良にはおいしいものがないし、魅力的なお店がない・・・。

実は私もそう思っていました。しかし、何度も通ううちに奈良は次々と違う顔を見せてくれます。同じお寺を訪れても、古代史という視点で見直してみると全然違う印象を受けました。

皆さんもぜひ、ディープな奈良の魅力にぜひ浸ってみてはいかがでしょうか。

次回は個人的に楽しんできた室生寺と熱田神宮参拝について、そして今回お世話になった宿「町屋ゲストハウスならまち」をご紹介します。

■取材協力
D’s Trip 大和リゾート株式会社

関 裕二(せき ゆうじ)さんプロフィール

1959(昭和34)年、千葉県柏市生ま れ。歴史作家・武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。
仏教美術に魅せられ奈良に通いつめ、独学で日本古代史を研究。
『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など著書多数。

NHKカルチャー青山教室目黒学園カルチャースクールで古代史講座が絶賛開講中。興味のある方はぜひ!

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この記事を書いた人
ちくわ

旅行メディア編集長兼ライター、総合旅行業務取扱管理者、旅行会社勤務経験あり、目黒区ボランティアガイド見習い中。プライベートでも古代史オタクとして年に数回フィールドワークに出かける旅好き。時々バス愛がさく裂!?

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